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2026/9/3

空室対策⑤ 仲介会社との連携
これまで「賃料」「募集条件」「写真と間取り図」「設備」についてお話ししてきました。
最後となる第5回は、「仲介会社との連携」について考えてみたいと思います。
賃貸物件の入居者募集では、最終的にお客様へ物件を紹介してくれる仲介会社の存在が非常に重要です。
いくら良い物件であっても、仲介会社に認知されていなかったり、紹介しにくい状態になっていたりすれば、入居希望者まで情報が届きません。
そのため、空室対策では物件そのものを改善するだけではなく、仲介会社が紹介しやすい状態を作り、できるだけ広く募集情報を届けることも重要だと思います。
① 仲介会社が「紹介しやすい物件」にする
仲介会社の営業担当者は、一人のお客様に対して複数の物件を探しています。
その中で、写真が揃っている、間取り図がある、募集条件が分かりやすい、内見方法が明確、問い合わせに対する回答が早い、といった物件は紹介しやすくなります。
逆に、詳細を問い合わせなければ分からない、鍵の手配に時間が掛かる、条件を確認しても回答が遅いという物件では、他に紹介しやすい物件があれば、そちらを優先されてしまう可能性があります。
仲介会社に「紹介してください」とお願いするだけではなく、紹介する側の手間をできるだけ減らしておくことが重要です。
② 募集情報を正確に、広く流通させる
以前の「写真と間取り図」でも触れましたが、賃料や共益費だけでなく、初期費用、駐車場、設備、入居条件、内見方法など、仲介会社が必要とする情報をできるだけ分かりやすく整理しておく必要があります。
また、募集条件を変更したにもかかわらず古い情報が残っていると、仲介会社からお客様へ誤った説明がされてしまうこともあります。
それと同時に重要なのが、その情報をどこまで流通させるかです。
例えば大手の仲介会社であっても、郊外になると店舗の営業エリア外となっている地域があります。
写真や間取り図などの募集資料を用意していても、エリアの関係でポータルサイトには掲載してもらえないことがあります。
特に郊外物件では、仲介会社へ募集を依頼しているにもかかわらず、結果としてポータルサイトに一社も掲載していないということも起こり得ます。
そこで当社では、郊外物件についても業者間で募集情報を流通させるだけにとどまらず、必要に応じて自社でもポータルサイトへ掲載し、直接客付けまで行うようにしています。
業者間で情報が流通していることと、一般の入居希望者がインターネット上でその物件を見付けられることは別の問題だからです。
③ 一社だけの募集にこだわらない
大手系列の管理会社などでは、専任物件として、その会社一社だけで募集しているケースを見掛けることがあります。
立地や条件が良く、自社だけで十分に反響を確保できる物件であれば、それでも問題はないと思います。
一方で、エリアや賃料、築年数などの条件から募集に苦戦しそうな物件まで同じ方法を続けると、長期間空室となってしまう場合があります。
実際に、数年間空室が続いている物件を見掛けることもあります。
担当者レベルでは他の仲介会社へ紹介を依頼していたとしても、業者間の物件流通サイトへ正式に掲載されていなければ、その物件を把握できる会社や営業担当者は限られます。
そのような状態で一社専任にこだわり続けることが、本当にその物件にとって最善なのかは考える必要があります。
募集に苦戦しているのであれば、できるだけ早い段階で募集方法そのものを見直すことが重要だと思います。
④ 個人エージェントの増加も考える
最近では、大手や地域の仲介店舗だけでなく、個人単位で活動する不動産エージェントの存在も目立つようになってきました。
入居希望者側も、従来のように店舗へ直接来店するだけではなく、SNSや紹介などを通じて個人のエージェントへ相談するケースが増えています。
そのため、客付けの経路も以前より分散していると感じます。
こうしたエージェントの中には、リアプロをはじめとする業者間の物件流通サイトなどから募集情報を取得しているケースもあります。
つまり、自社だけで物件情報を抱えている場合、その会社と直接つながりのない多数のエージェントには、物件の存在そのものが伝わりません。
無数に存在するエージェント一人ひとりへ個別に営業することは現実的ではありません。
だからこそ、専任募集にこだわることで空室が長期化しそうな場合には、早い段階で業者間の流通サイトへ情報を掲載し、幅広い仲介会社やエージェントが紹介できる状態を作ることが重要だと思います。
⑤ 仲介会社からの反応も重要な情報
長期間空室となっている場合、「仲介会社が紹介してくれない」と考えてしまうことがあります。
しかし、紹介されない理由を確認することも重要です。
例えば、「家賃が周辺より高い」「初期費用が高い」「同じ価格帯でもっと新しい物件がある」「駐車場が足りない」「設備が競合物件より弱い」など、日頃から入居希望者と接している仲介会社だからこそ分かる情報があります。
全ての意見をそのまま取り入れる必要はありませんが、複数の仲介会社から同じような指摘が出るのであれば、募集条件を見直す材料になります。
仲介会社は入居者を紹介してもらうだけの存在ではなく、市場の反応を知るための重要な情報源でもあります。
⑥ 広告料だけで解決しない
空室期間が長くなると、広告料を増額して仲介会社に紹介してもらおうと考えることがあります。
広告料を増やすこと自体が悪いわけではありませんし、状況によっては有効な方法だと思います。
しかし、賃料が相場とかけ離れていたり、写真や募集情報が不足していたり、そもそも物件情報が十分に流通していなかったりする状態で、広告料だけを増やしても根本的な解決にならない場合があります。
まずは、なぜ決まらないのかを確認したうえで、必要な対策を取るという順番が重要だと思います。
⑦ 募集は「出したら終わり」ではない
募集情報を業者間サイトへ登録し、ポータルサイトへ掲載したからといって、それで募集活動が終わるわけではありません。
募集開始後も問い合わせ数、内見数、仲介会社からの反応などを確認し、状況に応じて賃料、募集条件、写真、設備、情報の流通方法などを見直していく必要があります。
問い合わせそのものが少ないのであれば、賃料や募集情報、ポータルサイトへの露出に問題があるかもしれません。
問い合わせはあるものの内見につながらないのであれば、写真や条件に課題がある可能性があります。
内見はあるのに申込みにならないのであれば、実際の室内状態や競合物件との比較を確認する必要があります。
このように、募集状況を見ながら原因を一つずつ探していくことが大切です。
⑧ ターゲットを絞った営業も必要
また、インターネットへ掲載し、業者間の流通サイトへ情報を流したからといって、後は待っていれば良いというものでもありません。
特に事業用物件や、用途・立地などから入居者層がある程度想定できる物件では、こちらからターゲットを絞って営業することも必要だと思います。
例えば、物件の用途や立地から入居が見込めそうな法人や事業者を選定し、直接訪問して物件を紹介するといった方法も考えられます。
誰にでも広く物件情報を届けることと、その物件を必要としそうな相手へこちらからアプローチすることは、別の募集活動です。
ポータルサイトへの掲載、業者間流通、仲介会社への営業、ターゲットを絞った直接営業など、物件の特性に応じて複数の方法を組み合わせることが重要だと思います。
⑨ 自社でも客付けできる体制を整えておく
管理会社の中には、賃貸管理を専業とし、一般のお客様を対象とした賃貸仲介は行わない会社もあります。
それ自体が悪いわけではなく、仲介会社との連携によって十分に入居者を確保できる地域や物件であれば問題はありません。
しかし、郊外などでは仲介会社の営業エリア外となり、思うように協力を得られない地域もあります。
そのような場合に、管理会社自身が一般のお客様からの問い合わせに対応できないとなると、募集の選択肢が一つ減ってしまいます。
当社では、普段は仲介会社との連携を重視しつつも、必要な場合には自社でポータルサイトへ掲載し、問い合わせ対応、内見、申込みまで客付けできる体制を整えています。
常に自社で客付けする必要があるということではありません。
ただ、仲介会社の協力が十分に得られない場合でも、自社で動ける選択肢を持っておくことは、管理会社として必要だと考えています。
⑩ 賃貸管理は経験則だけでは難しい
賃貸管理は、大家業の延長線上の経験則だけで対応できるほど単純な業務ではないと思います。
もちろん、自主管理そのものを否定するものではありませんし、大家さん自身が非常に高い知識や経験を持って管理されているケースもあります。
一方で、空室が長期化すると、目新しい設備を追加する、極端な募集条件を設定するなど、いわゆる「奇策」に近い方法に頼りたくなることもあります。
しかし、空室対策では目新しいことをする以上に、賃料、募集条件、写真と間取り図、情報流通、仲介会社との連携、問い合わせへの対応など、基本的な部分を高い精度で積み重ねることの方が重要だと考えています。
管理会社についても、担当者個人の経験や感覚だけに依存するのではなく、市場調査、反響分析、仲介会社からの情報収集などを行いながら、物件ごとに募集戦略を組み立てていく専門性が必要です。
空室対策はアイデア勝負ではなく、分析、検証、実行を繰り返す仕事だと思います。
⑪空室を早く解消するための「戦略的なリーシング」
空室がある間は家賃収入が得られませんので、大家さんとしても気分が穏やかではないと思います。
だからこそ、早く楽になりたいという気持ちから、焦って賃料を下げたり、広告料を増やしたり、設備投資をしたりするのではなく、まずは何が原因で決まっていないのかを考える必要があります。
更には募集情報を掲載して待つだけではなく、反響を確認しながら方法を変え、必要であればこちらから営業する。
そうした戦略的なリーシングが、結果として空室を早く解消することにつながると考えています。
⑫満室にするための打つ手は無限
大家さん、管理会社、仲介会社、エージェントでは、それぞれ立場や役割が違います。
しかし、「空室を埋める」という目的では同じ方向を向いています。
仲介会社にただ入居者を探してもらうのではなく、管理会社側から正確な情報や写真、間取り図などを提供し、問い合わせにも迅速に対応する。
さらに、一社だけで募集することが適切なのか、業者間流通を広げるべきなのか、自社でもポータルサイトへ掲載すべきなのか、直接営業を行うべきなのかを、物件ごとに判断する必要があります。
今回まで5回にわたって、空室対策として「賃料」「募集条件」「写真と間取り図」「設備」「仲介会社との連携」についてお話ししました。
これらは一つだけを改善すれば良いというものではありません。
物件によって立地も条件も入居者層も違いますので、当然、取るべき対策も異なります。
満室にするために打つ手は無限にあります。
大切なのは「この物件は決まりにくい」と諦めることではなく、現在どこに問題があるのかを確認し、まだ試していない方法はないかを考え、一つずつ実行していくことです。
その積み重ねが、空室期間を短くし、安定した賃貸経営につながっていくと考えています。