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賃貸経営で「管理費を安くすること」だけを重視してはいけない理由

2026/9/13

賃貸管理会社を選ぶ際、

「管理費は何%ですか?」

という点を重視されるオーナー様は少なくありません。

もちろん、賃貸経営も事業ですから、支出を抑えることは大切です。

同じ業務内容、同じ管理品質であれば、管理費が安い会社を選ぶことには合理性があります。

しかし、賃貸経営で本当に考えなければならないのは、管理費をいくら払ったかではなく、最終的にオーナー様の手元にいくら利益が残ったかではないでしょうか。

管理費が安くても、空室が長期化したり、本来取れる家賃より低い条件で成約したり、必要以上の修繕費が掛かったりすれば、結果として収益は下がります。

今回は、なぜ賃貸経営で「管理費の安さ」だけを重視するべきではないのか、当社なりの考え方をお伝えします。

1.なぜ管理費の「安さ」がこれほど重視されるのか

管理費は、「3%」「5%」と数字で表されるため、管理会社を比較する際に非常に分かりやすい項目です。

一方で、管理会社の本当の実力は簡単には数字で比較できません。

例えば、

・適正な賃料を査定できるか
・空室をどのように募集するか
・仲介会社へどのように働き掛けるか
・修繕の必要性を適切に判断できるか
・工事金額が妥当か確認できるか
・現地の状況を把握しているか
・入居者対応を適切に行えるか
・オーナー様へ必要な報告ができるか

といった部分です。

私は、管理費の安さにこだわる傾向の背景には、賃貸管理業界そのものが抱える構造的な問題もあると思っています。

賃貸管理の仕事に対する期待度そのものが低く、「家賃を集金して、入居者から連絡があれば対応する仕事」という程度に思われている部分があるのではないでしょうか。

また、実際に業界内でも担当者によって知識、経験、判断力に大きな差があります。

管理会社へ高い専門性を期待しにくいのであれば、

「どうせ同じような仕事なら、安い会社で良い」

という考え方になるのも理解できます。

しかし、本来の賃貸管理は、単なる家賃集金業務ではありません。

オーナー様から資産を預かり、建物を維持しながら、その物件からどれだけ安定した収益を生み出せるかを考える仕事だと当社では考えています。

2.管理費の差より、空室や賃料の差の方が大きいこともある

例えば、月額6万円の部屋を10戸所有しているとします。

満室時の月額賃料は60万円です。

管理費5%なら月額3万円、3%なら月額1万8,000円。

その差は月額1万2,000円、年間では14万4,000円です。

決して小さな金額ではありません。

しかし、管理費の安い会社へ変更した結果、6万円の部屋が3か月余分に空室になれば、それだけで18万円の賃料収入を失います。

それだけで、年間の管理費差額を上回ります。

賃料設定も同じです。

本来6万円で成約できる部屋を、「早く決めるため」という理由で5万7,000円で成約したとします。

差額は月額3,000円ですが、年間では3万6,000円。

5年間入居していただけば18万円になります。

これが複数戸になれば、さらに大きな差になります。

管理費を数万円削減する一方で、それ以上の家賃収入を失っているのであれば、本当に「安い管理」と言えるでしょうか。

3.「管理費0円」なら、どこで利益を得ているのかを見る

近年では「管理費0円」を掲げる管理会社もあります。

もちろん、0円管理という仕組みそのものを否定するつもりはありません。

それぞれの会社にビジネスモデルがあります。

ただし、企業として管理業務を継続する以上、どこかで収益を確保しなければ事業として成立しません。

管理費が0円であれば、

・賃貸仲介
・売買仲介
・リフォーム工事
・保険
・付帯サービス

など、別の部分で収益を得る必要があるはずです。

ここで、一度オーナー様にもその会社の「収益構造」を考えていただきたいと思います。

賃貸オーナー様は、基本的には毎月安定した家賃というストック収入を確保しながら、不要な支出を抑え、長期間収益を得たい立場です。

一方で、管理費を極端に安くし、工事、売買、仲介などが発生することで収益を得る管理会社であれば、「何かが発生するほど会社の売上になる」という側面があります。

当然ながら、それだけで問題があるという話ではありません。

ただし、オーナー様にとって最も利益になる判断と、管理会社にとって最も売上になる判断が、常に一致するとは限りません。

当社では、オーナー様の収益が増えることで管理会社にも適正な管理報酬が入り、双方の利益ができるだけ同じ方向を向く関係の方が望ましいと考えています。

4.「自社工事だから安い」とは限らない

管理会社によっては、

「自社に工事部門があるので、リフォームを安くできます」

ということを強みにしている会社もあります。

確かに、自社施工によって中間マージンを削減できるケースはあります。

しかし、

自社施工=必ず安い

とは限りません。

自社で工事部門を持てば、施工担当者の人件費、車両費、設備費、事務所経費などの固定費が掛かります。

当然、その部門を維持するためには一定の工事件数と売上も必要になります。

大切なのは、自社施工か外注かではありません。

必要な工事を、必要な内容で、適正な価格で行っているか。

ここを見る必要があります。

実際、当社でも以前、他社管理物件を当社のお客様へ紹介して商談を進めた際、その管理会社の工事部門の担当者と工事金額を巡って意見が食い違い、トラブルになった経験があります。

もちろん、一つの事例だけで会社全体を評価することはできません。

しかし、その経験からも「管理会社に工事部門があるから安心」「自社施工だから必ず安い」と単純に判断するべきではないと考えています。

工事が本当に必要なのか。

その仕様でなければならないのか。

その金額は適正なのか。

そこまで確認して初めて、オーナー様にとって適切な工事と言えるのではないでしょうか。

5.自社で修理しない管理会社は「何もしない会社」なのか

一方、自社で漏水修理やリフォーム工事などを施工しない管理会社について、

「何もしない管理会社なのではないか」

と考える向きもあります。

しかし、これはPM(プロパティマネジメント)とBM(ビルディングマネジメント)の役割を少し混同しているのではないかと当社では考えています。

例えば漏水が発生した場合、管理会社自身が工具を持って漏水を修理することだけが管理業務ではありません。

管理会社には、

・どこから漏れているのか
・どのような調査が必要なのか
・緊急対応が必要なのか
・どの専門業者へ依頼するのか
・提示された工事内容が適切なのか
・工事金額は妥当なのか
・再発防止まで必要なのか

といった判断も求められます。

必要な工事を適切な専門業者へ依頼し、内容と価格を確認し、完了まで管理する。

これも重要な管理業務です。

そしてPMには、さらにその先があります。

建物を修理すること自体だけを目的とするのではなく、

建物を適切に維持しながら、その物件からどれだけ収益を残せるかを考えること。

これがPMの重要な役割だと考えています。

6.PMの成果は「工事をした量」ではなく「どの条件で成約したか」にも表れる

自社で工事をする管理会社の方が、オーナー様から見れば「動いてくれている」と感じやすいかもしれません。

工事をした。

現場へ行った。

設備を交換した。

こうした行動は目に見えるからです。

一方で、PMが行う仕事の中には、成果が目に見えにくいものもあります。

例えば、

・市場を調べる
・競合物件を分析する
・賃料を査定する
・原状回復の範囲を判断する
・募集条件を決める
・仲介会社へ働き掛ける
・安易な値下げを避ける

といった業務です。

仮に、自社では工事をしない管理会社であっても、必要な原状回復を適切に判断し、募集戦略を組み立てた結果、他の提案より3,000円高い賃料で成約できたとします。

その3,000円は、一度だけ得られる利益ではありません。

入居者様が契約を続けている間、毎月積み上がっていきます。

月額3,000円なら年間3万6,000円。

5年間なら18万円です。

さらに、その賃料水準を次回募集でも維持できれば、その効果はさらに続きます。

つまり、管理会社を評価するときには、

「どれだけ工事をしてくれたか」

だけではなく、

「どのような条件で成約させ、どの程度の収益を残してくれたか」

も見ていただきたいと思います。

これこそ、PMを「何もしない管理会社」と判断してはいけない理由の一つです。

7.工事費は単発、賃料改善は継続する

工事費と賃料収入では、お金の性質が違います。

例えば20万円の工事を行ったとします。

20万円という金額だけを見れば、大きな支出です。

しかし、それによって月額5,000円高い賃料で成約できれば、年間では6万円の増収になります。

単純計算なら3年4か月程度で20万円を吸収し、それ以降も同じ賃料差が続けばプラスになります。

もちろん、工事をすれば必ず賃料が上がるという意味ではありません。

そこを見極めることが重要です。

反対に、20万円の工事費を惜しんだ結果、月額5,000円家賃を下げなければ決まらなかったとします。

家賃を下げた5,000円は、その月だけの損失ではありません。

入居期間中、毎月続きます。

5年間であれば30万円です。

工事費は基本的には単発の支出ですが、賃料はストック収入です。

だからこそ、

「今回いくら掛かるか」だけでなく、「その支出によって今後いくらの収益を得られるのか」

という長期的な視点が必要です。

これは管理会社の評価についても同じです。

自社で工事を施工しているかどうかだけでなく、その管理会社がPMとしてどのような成約条件を実現しているのかを見る必要があります。

自社施工をしていなくても、賃料を3,000円、5,000円高く維持しながら成約できるのであれば、その効果は毎月積み上がります。

目に見える工事件数ではなく、長期的な収益改善も管理会社の成果として評価していただきたいと思います。

8.賃料査定と成約条件にも、もっとこだわるべき

賃貸管理の収益性を考える上で、賃料設定は非常に重要です。

数千円の差であっても、契約期間が長くなれば大きな違いになります。

だからこそ、

「まず少し高めに出して、決まらなければ後から下げましょう」

という募集を安易に繰り返すべきではないと当社では考えています。

途中で何度も条件変更をするくらいであれば、募集当初から、

「この室内クオリティなら、この賃料で成約できる」

と確信を持てるところまで査定に神経を注ぐべきです。

そして、こだわるべきなのは家賃だけではありません。

敷金、礼金、フリーレント、その他の募集条件を含め、どの条件で成約させるのか。

成約条件にはこだわってほしい。これは私自身の信念でもあります。

管理費を1%下げること以上に、こうした一つひとつの判断が長期的な収益を左右することがあります。

9.「サービスが多い=良い管理」とも限らない

もう一つ、管理会社を比較する際に慎重に考えていただきたいのが、サービスの多さです。

例えば、入居者様を定期的に訪問し、直接コミュニケーションを取ることを管理サービスの特徴としている会社もあります。

入居者様とのコミュニケーション自体を否定するものではありません。

適切な連絡や意思疎通は、建物を管理する上でも当然必要です。

ただし、私は管理会社と入居者様との距離感については、慎重であるべきだと考えています。

管理会社は入居者様の氏名、連絡先、契約内容など多くの情報を扱います。

さらに合鍵まで保管している場合には、非常に大きな権限を持つことになります。

賃貸住宅では、管理に携わる者などが保管している鍵を不適切に利用して、入居者の承諾なく室内へ立ち入るといった事件が問題になることもあります。

もちろん、これは一部の不適切な行為であり、入居者訪問を行っている管理会社全般に問題があるという話ではありません。

しかし、鍵を預かることには、それ自体に管理責任とリスクがあります。

当社では、こうしたトラブルを未然に避ける観点から、原則として入居者様の部屋の鍵はお預かりしない運用としています。

そのため、鍵を紛失した場合などには状況に応じて専門業者による開錠や破錠等で対応することになります。

多少不便に感じる場面があったとしても、管理会社が必要以上に入居者様の専有部分へアクセスできる状態をつくらないことも、一つのリスク管理だと考えているからです。

入居者様との関係についても、

「頻繁に訪問しているから丁寧な管理」
「入居者様と親しいから良い管理」

と単純に考えるのではなく、適切な距離感を保ちながら、必要な時に必要な対応ができているかを見ることが大切だと思います。

管理サービスは、多ければ多いほど良いとは限りません。

そのサービスが本当に必要なのか、そして新たなリスクを生んでいないかまで考えることも管理会社には必要です。

10.管理会社の利益とオーナー様の利益は同じ方向を向いているか

管理会社にも様々な会社があります。

客付けを優先し、仲介会社へ積極的に情報を提供して成約を目指す会社もあります。

一方で、工事受注、売買仲介、付帯商品の販売など、自社の収益を重視する会社も当然あります。

企業が利益を求めること自体は悪いことではありません。

当社も企業ですから、適正な利益がなければ事業を継続できません。

問題は、その会社が利益を得る仕組みと、オーナー様が利益を得る仕組みが、どの程度同じ方向を向いているかです。

物件の稼働率が上がる。

適正な家賃で成約する。

不要な支出が減る。

その結果としてオーナー様の利益が増え、管理会社も管理報酬を得る。

当社では、このような関係が理想だと考えています。

11.安ければ良い、ではサービスは続かない

少し違う業界の例になりますが、医療には、いわゆる「応招義務」があります。

しかし、医療も当然ボランティアではありません。

医師や看護師をはじめとする人件費、医療機器、建物、各種システムなど、多くの費用が掛かります。

適正な収入がなければサービスそのものを継続できません。

賃貸管理も同じだと思います。

入居者対応、家賃管理、募集、契約、修繕対応、現地確認、オーナー様への報告などを行うためには、人件費もシステム費も移動費も掛かります。

ただただ安くすれば良いというものではありません。

「安いこと」と「費用対効果が高いこと」は別の話です。

必要なサービスを適正な水準で継続して提供するためには、その対価も必要だと考えています。

12.だからといって、高ければ良いわけでもない

ここまで書くと、

「管理費や工事費が高くても良いと言いたいのか」

と思われるかもしれません。

もちろん、そうではありません。

管理会社側にも、コストを抑える努力は当然必要です。

当社でも、各種点検費や修繕・工事費については、金額と実施内容のバランスを確認しています。

金額に疑問があれば相見積もりを取ることもありますし、価格や対応内容が適切でないと判断すれば、依頼する業者自体を変更することもあります。

必要のない工事はしない。

必要な工事であっても、本当にその仕様が必要なのか確認する。

同等の品質であれば、より適正な価格で依頼できる方法を探す。

その一方で、必要な工事を単に「高いから」という理由だけで先送りしない。

当社では、このバランスが重要だと考えており、各種点検費や工事費についても価格競争力を意識しています。

13.最終的に見るべきなのは「管理費」ではなく「手残り」

賃貸経営の目的は、管理費を最小化することではありません。

物件を安定して運営し、最終的にオーナー様の手元へ利益を残すことです。

仮に年間10万円の管理費を削減できても、

・空室期間が延びて20万円減収した
・低い賃料で成約して年間10万円収入が減った
・必要以上の工事で20万円余分に支払った

のであれば、結果として得をしたとは言えません。

反対に、一定の管理費を支払っていても、

・稼働率を上げる
・適正な賃料で成約する
・より良い成約条件を確保する
・不要な工事を減らす
・必要な工事には適切に費用を掛ける
・建物の状態を適切に維持する
・不要な管理リスクを増やさない

ことができれば、長期的にはオーナー様の手元に残る金額が増える可能性があります。

だからこそ、管理会社を選ぶ際には、

「管理費は何%ですか?」

だけではなく、

「この会社は何で利益を得ているのか」
「空室をどのように募集するのか」
「賃料をどのように査定するのか」
「どこまで成約条件にこだわるのか」
「修繕はどのような考え方で提案するのか」
「工事金額はどのように確認するのか」
「PMとして物件の収益をどのように考えているのか」
「入居者との距離感や鍵の管理をどのように考えているのか」

といった部分まで確認していただきたいと思います。

「安い管理」ではなく「利益の残る管理」を

管理費が安いことは、一つのメリットです。

しかし、

「0円だから良い」
「3%だから良い」
「5%だから高い」

という単純な話ではありません。

また、

「自社で工事をしているから仕事をしている」
「外注しているから何もしていない」
「入居者を頻繁に訪問しているから丁寧な管理」

というように、目に見えるサービスの量だけで管理会社を判断するものでもないと思います。

PMの仕事は、必要なBM業務を適切にコントロールし、修繕費を精査し、賃料を査定し、募集方法を考え、成約条件にこだわり、リスクを管理しながら、最終的に物件の収益を高めることにあります。

工事費は単発で発生する支出です。

一方、適正な家賃で成約できれば、その収益は契約期間中積み上がります。

短期的な「安い・高い」だけを見るのではなく、長期的にどちらがオーナー様の利益につながるのか。

当社が理想とするのは、物件の収益が改善することでオーナー様の利益が増え、その結果として当社も適正な管理報酬をいただける関係です。

オーナー様の利益と、管理会社の利益ができるだけ同じ方向を向くこと。

そして、必要な費用については常に価格と内容を精査し、不要なサービスやリスクは増やさないこと。

管理会社を選ぶ際には、「管理費がいくら安いか」だけではなく、

「この会社へ任せた結果、長期的にどれだけ利益が残り、安心して物件経営を続けられるのか」

という視点を持っていただくことが、賃貸経営では非常に重要だと考えています。