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賃貸物件を所有していると、必ず修繕の問題が出てきます。
給湯器が壊れた。
漏水が発生した。
共用灯が切れた。
外壁が傷んできた。
エアコンが古くなった。
空室の内装をどこまで直すか迷う。
こうした場面で、
「どこまで直せば良いのか」
「今やるべきなのか」
「まだ使えるなら交換しなくても良いのではないか」
と悩まれるオーナー様は多いと思います。
当社では、修繕は「壊れたから全部交換する」「できる限りお金を掛けない」という二択ではないと考えています。
重要なのは、緊急性、必要性、収益への影響、将来のリスク、費用対効果を見ながら優先順位を付けることです。
今回は、賃貸物件の修繕をどのように考えるべきか、当社なりの考え方を整理します。
修繕には優先順位があります。
その中でも最優先なのは、放置すると被害が広がるものです。
例えば、
・漏水
・給排水管の異常
・外壁や天井材の落下リスク
・電気設備の異常
・雨漏り
・共用部の危険箇所
・消防設備の不具合
などです。
こうしたものは、「まだ使えるから様子を見よう」という判断が、かえって大きな支出につながることがあります。
例えば小さな漏水でも、放置すれば下階まで被害が広がり、内装だけでなく入居者様の家財などに影響が及ぶこともあります。
初期段階で数万円で済んだものが、後になって数十万円、数百万円の問題になることもあり得ます。
修繕費を抑えることは大切ですが、先送りすることで将来の支出が大きくなるものは、早めに対応する方が結果的に安くなることがあります。
修繕の中には、単純な収益計算だけでは判断できないものもあります。
例えば、
・消防設備
・エレベーター
・電気設備
・建物の安全性に関わる部分
・避難経路
・外壁落下など第三者への危険がある部分
です。
こうしたものは、
「この工事をして家賃がいくら上がるか」
という考え方だけでは不十分です。
安全性や法令順守に関わるものは、賃貸経営を続ける前提として必要です。
もちろん、業者から提案された内容をそのまま全て受け入れるという意味ではありません。
本当にその工事が必要なのか。
補修で対応できるのか。
更新時期は適切なのか。
金額は妥当なのか。
ここは確認すべきです。
しかし、必要な安全対策まで費用だけを理由に先送りするのは、賃貸経営として適切ではないと考えています。
入居中の設備不良も優先度は高くなります。
例えば、
・給湯器が使えない
・エアコンが動かない
・水が出ない
・排水できない
・玄関錠が壊れている
・インターホンが故障している
といったものです。
入居者様にとって日常生活に必要な設備であれば、対応が遅れるほど不満は大きくなります。
さらに、設備そのものの修繕費よりも、対応の遅さによって退去される方が損失が大きくなる場合があります。
例えば5万円の修理を先送りした結果、入居者様が退去し、その後2か月空室になれば、5万円以上の損失になることもあります。
修繕は工事費だけでなく、
「この対応をしないことで、退去や空室につながらないか」
という視点でも考える必要があります。
築年数が経過すると、
「設備が古いから交換しましょう」
という提案を受けることがあります。
しかし当社では、古いという理由だけで何でも交換する必要はないと考えています。
実際、当社でも設備不具合に対して、部品交換や調整などの延命的な処置を行うことがあります。
少額の修理で一定期間使用でき、再発リスクもそれほど高くないのであれば、必ずしも新品へ交換する必要はありません。
一方で、何でも延命すれば良いとも考えていません。
例えば、専有部分に設置されているエアコンで、既に10年以上経過しているものに不具合が出た場合には、当社では原則として交換を提案することがあります。
一度修理しても間もなく別の箇所が故障したり、再度入居者様にご不便を掛けたりする可能性があるためです。
最初の修理費は安くても、
修理する。
再び故障する。
再度業者を手配する。
最終的に交換する。
となれば、結果的に費用も手間も増えることがあります。
さらに、入居者様から見れば「何度も故障する設備」という印象になります。
そのため、
「修理できるかどうか」だけでなく、「修理することが経営上合理的かどうか」
まで考える必要があります。
古いから必ず交換するのでもなく、修理できるから必ず延命するのでもない。
設備の年数、故障内容、修理費、再発リスク、入居者様への影響を見ながら判断することが重要です。
空室の原状回復やリフォームでは、
「どこまできれいにするか」
を先に考えがちです。
しかし、本来はその前に、
「この部屋をどのくらいの賃料で貸したいか」
を考えるべきだと思います。
例えば、現状のままなら5万5,000円。
20万円掛ければ5万8,000円。
50万円掛ければ6万円。
というように、工事費と賃料の関係を考えます。
重要なのは、
「一番きれいにすること」
ではなく、
「投資額に対して、どの条件で成約できるか」
です。
100万円の工事をしても、家賃が2,000円しか上がらないのであれば、単純な賃料差だけでは回収に長い時間が掛かります。
反対に、20万円の工事で5,000円高く成約できるのであれば、十分検討する価値があります。
工事内容は、目指す成約条件から逆算するべきだと考えています。
修繕やリフォームを考える上で、非常に重要なのが「支出と収入の時間軸」です。
工事費は基本的には一度発生する支出です。
一方、賃料が上がれば、その増収は契約期間中続きます。
例えば、20万円の工事によって家賃を月額5,000円高く成約できたとします。
年間では6万円の増収です。
単純計算では、約3年4か月で20万円を回収できます。
その後も同じ賃料差が続けば、その分は収益改善になります。
逆に、20万円の工事費を惜しんだ結果、5,000円安い家賃で成約したとします。
5年間入居されれば、賃料差だけで30万円になります。
つまり、
目の前の工事費を抑えることが、長期的な利益につながるとは限りません。
この点は、賃貸経営では非常に重要だと考えています。
一方で、家賃を上げるためなら何でも工事すれば良いわけでもありません。
例えば100万円掛けて家賃が3,000円上がったとしても、年間の増収は3万6,000円です。
単純計算では回収に約28年掛かります。
その間に、別の修繕が必要になることもあります。
さらに、家賃が3,000円上がった理由が本当にその工事によるものかも検証が必要です。
工事を検討する際には、
・工事費
・賃料上昇額
・成約期間
・入居期間
・競合物件との差
・設備の耐用年数
・将来の再修繕
などを総合的に考える必要があります。
設備を追加したという満足感ではなく、経営として合理的かどうかを見ることが重要です。
空室対策というと、
・アクセントクロス
・デザイン照明
・ホームステージング
・おしゃれな設備
などが注目されることがあります。
もちろん、物件によっては効果があります。
しかし、「アクセントクロスを使えば決まりやすくなる」という単純なものではありません。
アクセントクロスについても、
「入居後に置く家具やカーテンと合わせづらい」
という意見があります。
管理会社やオーナー様が良いと思うデザインと、実際に入居する方の好みが一致するとも限りません。
特に色や柄の主張が強過ぎる場合には、かえってお客様を選ぶ部屋になってしまう可能性もあります。
そのため当社では、
「流行しているから」
「見栄えが良いから」
という理由だけでアクセントクロス等を採用するのではなく、その物件のターゲットや費用対効果を見ながら判断するべきだと考えています。
それよりもまず、
・水回りが清潔
・臭いがない
・建具が正常に動く
・照明が点く
・エアコンが正常
・給湯設備が正常
・共用部が清掃されている
といった基本的な部分を整えることが先です。
入居希望者にとって、
「きれい」
「普通に使える」
「きちんと管理されている」
という印象は非常に重要です。
見た目の演出より、まずは基本性能を整えるべきだと考えています。
室内ばかりに目が向きがちですが、共用部分も重要です。
例えば、
・共用灯が切れている
・集合ポストが壊れている
・駐輪場が乱れている
・エントランスが汚れている
・防犯上不安がある
・外壁が著しく劣化している
といった状態では、室内がきれいでも内覧時の印象は悪くなります。
特に築古物件では、
「古いけれど管理されている」
と感じてもらえるか、
「古くて放置されている」
と感じられるかで大きな差が出ます。
共用部分への投資は、直接家賃が上がるとは限りません。
しかし、入居率や退去率、物件全体の印象には影響します。
そのため、室内だけでなく建物全体を見ながら優先順位を決める必要があります。
防犯カメラ、センサーライトなどの設備は、必ずしも設置した瞬間に家賃が上がるわけではありません。
しかし、
・不法投棄
・無断駐車
・盗難
・入居者間トラブル
などの抑止につながることがあります。
修繕や設備投資を考える際には、
「家賃がいくら上がるか」
だけではなく、
「トラブルをどれだけ減らせるか」
という視点も必要です。
トラブル対応には、業者費用だけでなく、管理会社やオーナー様の時間も掛かります。
問題が繰り返し発生している物件であれば、防犯設備への投資が合理的なケースもあります。
築年数が経過した物件では、
「屋上防水も必要」
「外壁も気になる」
「給水設備も古い」
「室内設備も交換したい」
というように、複数の修繕候補が同時に出ることがあります。
しかし、予算には限りがあります。
その場合は、
安全性・緊急性
被害拡大の可能性
入居者への影響
空室募集への影響
将来の収益改善
美観や付加価値
というように優先順位を付けます。
すぐ必要なもの。
数年以内に必要なもの。
まだ先送りできるもの。
これを分けて考えるだけでも、資金計画は立てやすくなります。
修繕は「今やるか、やらないか」ではなく、いつやるかを決めることも重要です。
同じ100万円の見積りでも、その内容によって評価は全く変わります。
そのため、
・何を施工するのか
・どこまで含まれているのか
・施工数量は妥当か
・部分補修はできないか
・他の方法はないか
を確認する必要があります。
当社でも、工事や各種点検については、金額と実施内容のバランスを確認しています。
金額に疑問があれば業者へ確認し、必要に応じて相見積もりを取ったり、依頼する業者を変更したりすることもあります。
逆に、一番安い業者を選べば良いとも考えていません。
工事内容、対応、保証、施工品質を含めて判断する必要があります。
安いか高いかではなく、その内容に対して適正な価格かどうか。
ここを見ることが重要です。
修繕が発生すると、管理会社から
「業者から見積りが出ました。承認してください」
という連絡が来ることがあります。
もちろん、最終的に修繕を実施するか判断するのはオーナー様です。
しかし、管理会社は単に見積書を転送するだけではなく、
「なぜこの工事が必要なのか」
「どの程度急ぐのか」
「他の方法はあるのか」
「この金額は妥当なのか」
を整理して伝えるべきだと考えています。
当社でも、必要に応じて写真や動画を使いながら現状を説明し、見積金額についても当社側で妥当性を確認した上でオーナー様へご提案しています。
管理会社には、オーナー様が経営判断できるところまで情報を整理する役割もあると思います。
修繕費は目に見える支出です。
そのため、
「今年は修繕費をほとんど使わなかった」
というと、良い経営のように感じるかもしれません。
しかし、本当に必要な修繕まで先送りしているのであれば、問題は将来へ移動しただけです。
逆に、必要な修繕を適切に行い、
・退去を減らす
・賃料を維持する
・空室期間を短縮する
・将来の大規模修繕を抑える
ことができれば、その支出は経営上合理的な場合があります。
修繕費は、ただ少なければ良いものではありません。
必要な支出を適切なタイミングで行うことが重要です。
賃貸物件を長期間所有していれば、どうしても高額な修繕が必要になる時期があります。
外壁、防水、給排水設備、エレベーター、ポンプなど、数十万円から数百万円単位の支出が発生することもあります。
そうした時に、
「高いからできない」
という状態になってしまうと、必要な修繕まで先送りすることになりかねません。
だからこそ当社では、修繕費を抑える努力と同時に、必要な修繕が発生した時にオーナー様にご快諾いただける収益状態をつくることも重要だと考えています。
空室を減らす。
賃料を適正化する。
募集条件を見直す。
不要な支出を抑える。
こうした日々の積み重ねによって収益性を改善しておけば、いざ高額な修繕が必要になった時にも、オーナー様が前向きに判断しやすくなります。
当社でも、将来高額な支出が必要になるケースが出たとしても、
「それならやりましょう」
とオーナー様に判断していただけるよう、日々物件の収益性改善に取り組んでいます。
これは、単に修繕費のためにお金を残すという話ではありません。
賃貸経営そのものが安定していれば、必要な修繕や設備投資に資金を回すことができます。
その結果、建物の状態が良くなり、さらに物件の競争力が高まる。
収益改善 → 必要な修繕・再投資 → 物件競争力の向上
という循環をつくることが重要だと考えています。
賃貸経営では、工事一件だけを見て、
「10万円掛かった」
「50万円掛かった」
と判断するのではなく、物件全体の収支で考える必要があります。
例えば20万円の工事を行っても、その後に賃料が上がり、空室期間が短くなり、長く入居いただければ、結果として利益が増えることがあります。
反対に、工事費を惜しんだ結果、
・家賃を下げる
・空室期間が長くなる
・退去が増える
・後で大きな修繕が必要になる
のであれば、結果的に高くつきます。
だからこそ、
修繕費をいくら使ったかではなく、その支出によって物件全体の収益がどう変わったか
を見る必要があります。
賃貸物件の修繕には、正解が一つあるわけではありません。
すぐ直すべきものもあれば、まだ使用できるものもあります。
延命修理で十分なものもあれば、再発リスクを考えて交換した方が良いものもあります。
費用を掛けた方が収益につながるものもあれば、工事をしてもほとんど効果がないものもあります。
重要なのは、
安全性、緊急性、入居者への影響、募集への影響、再発リスク、費用対効果、長期収益
を見ながら優先順位を決めることです。
当社では、
「壊れたから交換する」
「修理できるから延命する」
「古いから交換する」
「高いからやらない」
「流行しているから設備を追加する」
という単純な判断ではなく、
その工事が本当に必要か、その金額が妥当か、その方法が最も合理的か、その支出によって将来どのような効果が得られるか
まで考えることが重要だと考えています。
必要のない工事はしない。
延命で十分なら延命する。
ただし、再発リスクが高ければ交換する。
収益につながる投資であれば、必要以上に費用を惜しまない。
そして、高額な修繕が必要になった時にも前向きに判断できるよう、日頃から物件の収益性を高めておく。
修繕費をただ減らすのではなく、限られた資金をどこに使えば賃貸経営全体が良くなるのか。
この視点で修繕の優先順位を考えることが、長期的に安定した賃貸経営につながると考えています。