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賃貸経営では、「満室」という言葉が非常に分かりやすい目標として使われます。
もちろん、空室がなく、全ての部屋から家賃が入っている状態は望ましいことです。
しかし、
満室だから、賃貸経営が上手くいっている。
とは限りません。
例えば、周辺相場より大幅に安い賃料で満室になっている物件。
修繕費や原状回復費が多く掛かっている物件。
家賃滞納が多い物件。
入退去が頻繁に繰り返されている物件。
点検費や保守費などの固定的な支出が必要以上に高い物件。
こうした物件では、満室であってもオーナー様の手元に思ったほど利益が残っていないことがあります。
反対に、空室が一室あったとしても、適正な賃料を確保し、修繕費やその他の支出が適切に管理されていれば、収益性の高い物件になることもあります。
そのため賃貸経営では、
「何室埋まっているか」だけではなく、「最終的にいくら残っているか」
を見ることが重要です。
今回は、賃貸経営で確認しておきたい数字について考えてみたいと思います。
例えば10室のアパートがあったとします。
A物件は10室満室で、一室あたりの家賃が5万円。
B物件は9室入居で、一室あたりの家賃が6万円。
A物件の月額家賃収入は50万円です。
B物件は一室空室でも54万円です。
この時点で、「満室」という状態だけを見ればA物件の方が良く見えますが、家賃収入ではB物件の方が上です。
もちろん、実際の賃貸経営はこれほど単純ではありません。
しかし、重要なのは、
稼働率と収益性は同じではない
ということです。
空室を埋めるために必要以上に賃料を下げれば、稼働率は上がるかもしれません。
しかし、一度下げた賃料は、その入居者様が入居している間、毎月収益に影響します。
そのため当社では、満室にすることだけを目的にするのではなく、
どの条件で満室にするのか
が重要だと考えています。
物件の収益を見る際には、まず満室時にどの程度の収入があるのかを把握します。
住居賃料、共益費、駐車場賃料、テナント賃料など、物件そのものから得られる継続的な収入です。
そして、それに対して実際にどれだけ収入が入っているのかを比較します。
例えば満室時に年間600万円の賃料収入が得られる物件で、実際の年間収入が540万円であれば、単純には90%程度の稼働ということになります。
ただし、ここでも注意が必要です。
満室想定賃料そのものが適正でなければ、数字の意味が変わります。
例えば、本来年間660万円程度の収入を得られる物件なのに、低い賃料で長期間貸しているため、満室想定収入自体が600万円になっているケースです。
その場合、
「満室だから問題ない」
ではなく、
賃料水準そのものに改善余地がないか
を見る必要があります。
稼働率は分かりやすい数字ですが、それだけでは十分ではありません。
例えば管理開始時に、
家賃5万円×10室=50万円
だった物件が、
家賃5万3,000円×10室=53万円
になれば、同じ満室でも毎月3万円、年間36万円の増収になります。
つまり、
「何室埋まったか」と同じくらい、「いくらで埋まったか」が重要
ということです。
賃貸経営では、家賃を1,000円、2,000円上げることを小さな話のように感じるかもしれません。
しかし、月額3,000円の差でも年間3万6,000円、5年間で18万円です。
これが複数戸あれば、大きな差になります。
だからこそ、当社では賃料査定と成約条件にはできる限りこだわるべきだと考えています。
賃貸経営で本当に重要なのは、家賃収入の総額だけではありません。
そこから管理費、清掃費、点検費、修繕費、原状回復費、共用部電気代、水道代、固定資産税、保険料、募集関連費用など、様々な支出が発生します。
家賃収入が年間600万円あったとしても、支出が300万円掛かれば、単純な手残りは300万円です。
一方、家賃収入が570万円でも、支出が200万円で済んでいれば370万円残ります。
この場合、売上が少ない後者の方が利益は大きくなります。
だからこそ、
「いくら入ったか」と同時に「いくら出ていったか」を見る
必要があります。
賃貸経営で意外と見落とされやすいのが、以前から継続している保守契約や点検費用です。
例えば、
・エレベーター保守点検
・消防設備点検
・貯水槽清掃、点検
などです。
こうした業務は必要性が高いものですが、
「昔からこの会社にお願いしているから」
という理由だけで、長期間同じ業者へ依頼しているケースもあります。
もちろん、長年付き合っている業者だからこその安心感や対応力もありますので、単純に安い会社へ変更すれば良いという話ではありません。
しかし、同じような業務内容でも契約内容や業者によって金額に差が出ることがあります。
年間で見ると大きな差ではないように感じても、月額換算し、それが5年、10年と続けば相当な金額になります。
例えば年間12万円の差であれば、10年間で120万円です。
賃貸経営では、一回だけ掛かる修繕費以上に、毎年継続して発生する固定的な支出の差が長期的には大きくなることがあります。
そのため当社でも、各種点検費については、
「今の金額は妥当なのか」
「同じ内容でもっと合理的な方法はないか」
を確認するようにしています。
必要な点検を減らすのではなく、必要な内容を適正な価格で継続することが重要です。
修繕費についても注意が必要です。
例えば年間の修繕費が50万円だった物件と、100万円だった物件を比較すると、50万円の方が良く見えます。
しかし、100万円掛けた結果、
・賃料が上がった
・空室期間が短くなった
・入居者の退去が減った
・将来の大きな故障を防げた
のであれば、その100万円は必ずしも無駄ではありません。
反対に、修繕費を10万円に抑えたものの、設備故障が繰り返され、建物の印象が悪くなり、退去が増え、家賃を下げないと決まらなくなったのであれば、長期的には収益を悪化させる可能性があります。
修繕費は、
「いくら使ったか」ではなく、「その支出がどのような結果につながったか」
で判断する必要があります。
プロパンガスを採用している物件では、ガス会社によって、給湯器やエアコンなどの設備について保証や修理対応を組み込んだプランを用意している場合があります。
こうした仕組みを上手く活用できれば、設備故障時のオーナー様の修繕負担を抑えられるケースがあります。
例えば給湯器の故障が発生する度にオーナー様が全額負担する場合と、一定の設備保証が付いた契約とでは、長期的な修繕費に差が出ることがあります。
ただし、
「設備を付けてもらえるから得」
と単純に考えるべきではありません。
契約期間や解約条件、保証対象、入居者様が負担するガス料金への影響など、契約全体を確認する必要があります。
重要なのは、設備費だけを単独で見るのではなく、
物件全体としてオーナー様と入居者様の双方にとって合理的な条件になっているか
です。
使える仕組みは活用する。
ただし、その代わりにどのような条件が付いているのかまで確認する。
こうした視点も、修繕費を適正化する上では重要です。
満室でも、頻繁に入退去を繰り返している物件は注意が必要です。
退去が発生すれば、原状回復費、ハウスクリーニング、設備補修、募集費用、空室期間の賃料損失などが発生します。
例えば5万円の部屋が毎年入れ替わる物件と、5年間同じ入居者様が住んでいる物件では、同じ家賃でも収益性は変わってきます。
そのため、
入居率だけでなく「どの程度長く入居いただいているか」
も重要な指標です。
単純に入居者を決めるだけではなく、トラブルを減らし、適切に建物を管理し、長く住んでいただける環境をつくることも収益改善につながります。
契約上は満室でも、家賃が入っていなければ意味がありません。
そのため、
入居率と入金率は別に考える必要があります。
10室全てに入居者がいても、1室で長期滞納が発生していれば、実際の収入は満室とは言えません。
保証会社を利用している場合でも、保証対象、免責、手続き条件などがあります。
家賃管理では、
「契約しているか」
ではなく、
「実際に回収できているか」
を見る必要があります。
管理会社を比較すると、
「管理費3%」
「管理費5%」
といった数字に目が行きやすいと思います。
しかし、年間数万円管理費が安くなったとしても、
・修繕費が高い
・賃料設定が低い
・空室期間が長い
・保守点検費が割高
・不要な付帯サービスが多い
のであれば、物件全体としてはマイナスになることがあります。
見るべきなのは、
管理費単体ではなく、その管理会社へ任せた結果の物件全体の収支
です。
管理費を削減することは大切ですが、管理費を減らすこと自体が賃貸経営の目的ではありません。
物件に借入がある場合には、金融機関への返済もあります。
物件の運営だけを見れば利益が出ていても、借入返済後にはほとんど現金が残っていないこともあります。
そのため、
家賃収入
- 運営経費
- 借入返済
まで見た上で、
実際に毎月いくら現金が残っているのか
を確認することも重要です。
特に大規模修繕が必要になった時、毎月のキャッシュフローに余裕がなければ、必要な工事を実施できないことがあります。
満室なのに、
「修繕費を出す余裕がない」
という状態であれば、経営としては注意が必要です。
賃貸物件を長期間所有していれば、外壁、屋上防水、給排水設備、エレベーター、給水ポンプなど、高額な修繕が必要になる時期が来ます。
毎月わずかに利益が出ているだけでは、数百万円規模の工事が発生した時に対応できません。
だからこそ当社では、単に満室を目指すだけでなく、日頃から物件の収益性を改善することが重要だと考えています。
空室を減らす。
適正な賃料で成約する。
点検費や修繕費を適正化する。
利用できる設備保証等があれば合理的に活用する。
不要な支出を減らす。
こうした積み重ねによって、
必要な修繕が発生した時に、オーナー様が前向きに判断できる経営状態をつくること
も重要です。
例えば同じ家賃6万円で成約したとしても、
A物件は退去後1か月で成約。
B物件は退去後6か月で成約。
だった場合、その差は5か月分、30万円です。
そのため、賃料だけでなく空室期間も見る必要があります。
ただし、
「早く決めれば何でも良い」
という話ではありません。
6万円で1か月後に決まる物件を、5万5,000円へ下げて1週間で決めても、長期間の収益では不利になる可能性があります。
つまり、
「何日で決まったか」と「いくらで決まったか」をセットで見る
ことが重要です。
表面上の家賃が高くても、条件によっては実質収入が低くなることがあります。
例えば、
家賃6万円でフリーレント2か月。
家賃5万8,000円でフリーレントなし。
という条件では、契約期間によっては後者の方が収益性が高い場合があります。
広告料についても同じです。
高額な広告料を支払えば成約が早くなる可能性はありますが、それもオーナー様の支出です。
だからこそ、
・賃料
・フリーレント
・広告料
・初期費用条件
・設備投資
まで含めた実質的な成約条件を見る必要があります。
当社では、単に「満室になった」という結果だけではなく、どの条件で成約したのかにこだわることが重要だと考えています。
賃貸経営の数字を見る時には、単月だけで判断しないことも重要です。
例えば、ある月に100万円の修繕費が発生すれば、その月だけを見ると大きな赤字になります。
しかし、その修繕によってその後の賃料や稼働率が改善すれば、数年間ではプラスになることがあります。
逆に、今年は修繕を全くしていないため利益が多く見えても、必要な修繕を先送りしているだけかもしれません。
そのため、
1年前と比較して賃料はどうなったか。
稼働率は改善したか。
空室期間は短くなったか。
固定的な点検費や保守費は適正化されたか。
修繕費はどう推移しているか。
手残りは増えているか。
というように、
数字を時系列で見ること
が重要です。
管理会社を変更した場合にも、
「変更後何か月で、どの数字がどう改善したのか」
を見ると、管理の成果が分かりやすくなります。
賃貸経営の改善というと、
「経費を削減する」
という話に偏りがちです。
しかし、経費削減には限界があります。
一方で、空室を埋める、家賃を上げる、駐車場の使い方を見直す、募集条件を改善するといった方法で収入そのものを増やせれば、その効果は継続します。
同時に、
エレベーター保守費を見直す。
消防設備点検や貯水槽清掃の費用を確認する。
修繕業者の金額を精査する。
プロパンガス物件で利用できる設備保証等があれば、契約条件を確認した上で活用する。
といった支出面の改善も行う。
当社では、
収入を増やすことと、不要・過大な支出を減らすことの両方
を見ることが重要だと考えています。
例えば収入を年間30万円増やし、固定的な支出を年間10万円減らすことができれば、合計40万円の収益改善になります。
どちらか一方だけを見るよりも、物件全体を見た方が改善余地は大きくなります。
細かく分析しようと思えば、賃貸経営にも様々な指標があります。
しかし、まずは次のような数字を継続して確認するだけでも、物件の状態はかなり見えてきます。
・満室時の想定賃料収入
・実際の賃料収入
・稼働率
・平均賃料
・空室期間
・滞納額、未収額
・年間修繕費
・原状回復費
・管理費
・各種点検、保守費
・共用部の水道光熱費
・借入返済額
・最終的な手残り
そして、これらを前年や管理開始時と比較します。
「今年は満室だった」
だけではなく、
「満室時の収入はいくら増えたのか」
「実際の収入はいくら増えたのか」
「固定費はいくら減ったのか」
「修繕費は適正だったのか」
「最終的な利益はいくら増えたのか」
まで見ることで、賃貸経営の状態が分かるようになります。
満室は、賃貸経営において重要な目標の一つです。
当社でも当然、空室はできる限り早く成約させたいと考えています。
しかし、満室そのものを最終目的にしてしまうと、
家賃を下げ過ぎる。
過剰なフリーレントを付ける。
必要以上の広告料を支払う。
固定費を見直さない。
入居後の収益性を考えず、とにかく成約を優先する。
といったことにもなりかねません。
重要なのは、
どの賃料で、どの条件で、どのくらいの期間入居いただき、その間にどれだけの費用が掛かり、最終的にいくら利益が残ったのか
です。
満室は「結果」の一つであって、賃貸経営の目的そのものではありません。
当社では、単純な稼働率だけではなく、
賃料。
空室期間。
未収金。
修繕費。
原状回復費。
点検・保守費。
成約条件。
そして最終的な手残り。
こうした数字を総合的に見ながら、物件の収益性を改善していくことが重要だと考えています。
収入を増やすだけでもなく、支出を減らすだけでもない。
収益を上げながら、必要な支出は適正化する。
その積み重ねによって、
「満室かどうか」ではなく、「経営として良くなっているか」
を見ることが、長期的に安定した賃貸経営につながるのではないでしょうか。