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賃貸物件を所有していると、管理会社から突然、
「設備が故障したため、修繕見積りをお送りします」
「交換が必要ですので、ご承認をお願いします」
といった連絡が来ることがあります。
数万円程度であれば、そのまま承認されることもあると思います。
しかし、10万円、30万円、100万円と金額が大きくなってくると、
「本当に必要なのか」
「この金額は妥当なのか」
「修理ではなく交換する必要があるのか」
と疑問を持たれるのではないでしょうか。
修繕は賃貸経営を続ける以上、避けることのできない支出です。
一方で、必要のない工事や割高な工事まで全て承認していては、オーナー様の収益を圧迫します。
反対に、費用を惜しんで必要な修繕を先送りすれば、後からさらに大きな支出につながることもあります。
そこで今回は、管理会社から修繕見積りが届いた時に、大家さんが確認しておきたい5つのポイントについて解説します。
最初に確認したいのは、
その工事を本当に今実施する必要があるのか
ということです。
修繕には優先順位があります。
例えば、
・漏水
・断水
・給湯器の故障
・電気設備の異常
・外壁や天井材の落下リスク
・消防設備の不具合
・入居者様の生活に重大な支障がある設備故障
などは、早急な対応が必要になることがあります。
こうした工事を先送りすると、被害が広がったり、入居者様に長期間不便を掛けたりして、結果としてさらに大きな損失につながる可能性があります。
一方で、
「そろそろ古くなってきたから」
「業者から交換を勧められたから」
というだけで、直ちに交換する必要がないケースもあります。
例えば、まだ正常に動作していて、安全上も問題がなく、部品供給も続いている設備であれば、経過観察という判断もあり得ます。
そのため見積りが来たら、
「なぜ今工事をする必要があるのか」
「半年後、1年後では駄目なのか」
「そのまま使用した場合、どのようなリスクがあるのか」
を確認してみることをお勧めします。
設備が故障した場合、
「修理できるなら修理した方が安い」
と考えがちです。
確かに、数千円から数万円の修理で問題なく使用できるのであれば、交換する必要はありません。
当社でも、不具合の内容によっては部品交換や調整など、延命的な処置を行うことがあります。
しかし、修理できるからといって、必ず修理することが合理的とは限りません。
例えば、専有部分のエアコンが10年以上経過しており、不具合が発生した場合。
一度修理しても、別の箇所が間もなく故障する可能性があります。
その場合、
修理する。
再度故障する。
もう一度業者を手配する。
最終的に新品へ交換する。
となれば、結果的に費用も手間も増えてしまいます。
さらに、入居者様にも繰り返しご不便を掛けることになります。
一方で、「部品がないから交換です」と言われても、それをそのまま受け入れるべきとは限りません。
当社でも以前、ある設備について「交換部品がないため本体交換が必要」と提案されたことがありました。
しかし、交換費用が高額だったため別の業者にも相談したところ、交換部品を確保できることが分かり、結果として本体交換をせず、修理費用を大幅に抑えることができました。
この経験からも、
「部品がない」
「修理できない」
「交換しかない」
という説明について、費用が大きい場合には一度別の可能性がないか確認する価値があると考えています。
ただし、反対に古い設備を無理に延命すれば良いという話でもありません。
設備の使用年数、故障内容、修理費、交換費用、部品供給状況、再故障の可能性を比較して、
「修理できるか」ではなく、「修理することが合理的か」
を判断することが重要です。
見積金額を見る時に、
「30万円だから高い」
「5万円だから安い」
と金額だけで判断するのは危険です。
大切なのは、
その工事内容と数量に対して、その金額が妥当かどうか
です。
例えば同じ30万円でも、
・どの範囲を施工するのか
・どの材料を使用するのか
・施工数量は適切か
・何人で何日作業するのか
・撤去処分費は含まれているのか
・足場や養生費が含まれているのか
・保証はあるのか
によって評価は変わります。
当社でも、クッションフロアの見積りで印象に残っている事例があります。
その業者は、㎡あたりの単価だけを見ると他社より安価でした。
しかし、見積書をよく確認すると、施工面積が部屋の専有面積とほぼ同じ数字で計上されていました。
当然、専有面積の全てがクッションフロアであるとは限りません。
キッチンや水回り、収納、その他の仕上げが異なる部分もあります。
つまり、単価は安くても数量が大きければ、最終的な工事金額は必ずしも安くならないということです。
見積りでは、
「単価はいくらか」
だけでなく、
「その単価を何㎡、何個、何人工に掛けているのか」
まで見る必要があります。
特に、
「一式 300,000円」
という見積りだけでは、本当に適正なのか判断しづらい場合があります。
内訳や数量が分からなければ、管理会社へ確認して良いと思います。
工事が始まった後に、
「ここも悪かったので追加です」
「想定以上に傷んでいたので追加費用が必要です」
という話が出ることがあります。
もちろん、解体してみなければ分からない不具合もありますので、全ての追加工事を事前に予測することはできません。
しかし、当社でも過去に、工事開始後に追加費用が発生し、
「そもそも当初の現地調査や見積りが少し甘かったのではないか」
と感じた経験があります。
そのため、高額な工事では、
「この見積りで完了する可能性が高いのか」
「追加が発生するとすれば、どのようなケースか」
「追加費用が発生する可能性はどの程度あるのか」
も確認しておくと良いと思います。
特に最初の見積金額だけを安く見せ、工事開始後に追加が重なれば、結果として他社より高くなることもあります。
見積りの安さだけでなく、見積りの精度も業者選びでは重要です。
特に遠方に物件を所有している場合、オーナー様自身が現地を確認することは難しいと思います。
そのような状態で、
「故障しているので交換が必要です」
と見積書だけ送られても、判断は簡単ではありません。
そのため、
・不具合箇所の写真
・設備全体の写真
・劣化状況
・漏水箇所
・破損部分
・必要に応じて動画
などを確認すると分かりやすくなります。
例えば、
異音がする。
水圧がおかしい。
機械が途中で停止する。
といった症状は、写真だけでは分かりにくい場合があります。
そのような場合は動画の方が状況を伝えやすくなります。
当社でも、必要に応じて写真や動画を使いながら、オーナー様に現地の状態をご説明しています。
そして、
「この状態だから、この工事が必要です」
というところまで分かるようにすることを心掛けています。
修繕費は、その時点では支出です。
しかし、その支出によって賃料を維持できたり、家賃を上げられたり、退去を防げたりするのであれば、長期的にはプラスになることがあります。
例えば20万円の工事によって、従来より月額5,000円高い賃料で成約できたとします。
年間では6万円の増収です。
単純計算なら約3年4か月で20万円を回収できます。
その後も同じ賃料差が続けば、その分は収益改善になります。
反対に、20万円の工事費を惜しんだために、月額5,000円賃料を下げなければ成約できなかったとします。
5年間入居いただけば、賃料差だけで30万円になります。
つまり、
「今回20万円掛かるから高い」
という判断だけでは不十分です。
一方で、100万円掛けても家賃が2,000円しか上がらないのであれば、費用対効果は低い可能性があります。
修繕見積りを見る時には、
「この工事で何が改善されるのか」
「賃料に影響するのか」
「空室期間を短縮できるのか」
「退去防止になるのか」
「将来の大きな故障を防げるのか」
まで考える必要があります。
高額な見積りが出ると、
「必ず相見積りを取った方が良い」
と思われるかもしれません。
もちろん、金額が大きい工事や、相場が分かりにくい工事については有効です。
当社でも必要に応じて相見積りを取っています。
実際、先ほどのように「部品がないので交換」と言われた案件でも、別の業者へ相談したことで部品が見つかり、大幅に費用を抑えられたことがあります。
一方で、全ての工事で相見積りを取る必要があるとは限りません。
例えば緊急性の高い漏水で、複数社の見積りを待っている間に被害が広がれば、本末転倒です。
重要なのは、
「相見積りを取ったかどうか」ではなく、「価格と工事内容の妥当性を確認したかどうか」
です。
当社でも、これまで様々な工事業者と仕事をしてきました。
その中で感じるのは、単純に最安値の業者へ依頼すれば良いというものではないということです。
単価は安いが数量が多い。
当初見積りは安いが、後から追加が増える。
修理できる可能性があるのに、すぐ交換を提案する。
工事は安いが、施工後に不具合が出る。
こうしたケースがあります。
さらに重要なのが、工事後の対応です。
当社でも、価格自体は安く抑えられたものの、後になって手直しが必要になったケースがあります。
その際、
「対応します」
とは言うものの、実際にはなかなか動いてもらえず、アフター対応を期待できないと感じた業者もいました。
工事は、施工した時点で全てが終わるとは限りません。
施工後に不具合が見つかった時、きちんと現地を確認してくれるか。
自分たちの施工に問題があれば責任を持って手直ししてくれるか。
連絡に対して誠実に対応してくれるか。
こうした部分も非常に重要です。
そのため当社では、様々な経験を重ねる中で、
価格的にも、工事内容的にも、そして人柄や対応面でも納得できる業者さんへ仕事をお願いする
ことを大切にしています。
安いだけではなく、適正価格であること。
必要な工事だけを提案してくれること。
分からないことをきちんと説明してくれること。
工事後も責任を持って対応してくれること。
こうした業者と継続的に付き合う方が、結果としてオーナー様にとってもメリットが大きいと考えています。
管理会社の修繕対応を見る際に、重要なのが、
見積書以外に何を説明してくれるか
です。
例えば、
「業者から30万円の見積りが出ました。どうしますか?」
だけでは、オーナー様に判断を丸投げしている状態になってしまいます。
本来であれば、
「現在この状態です」
「原因はこのように考えています」
「この工事が必要な理由はこれです」
「他にはこの方法があります」
「金額については当社でも確認しました」
「追加が発生する可能性はこの程度です」
「当社としてはこちらをお勧めします」
というところまで整理した方が、オーナー様は判断しやすくなります。
最終的な経営判断をするのはオーナー様です。
しかし、その判断に必要な材料を整理することは管理会社の仕事だと当社では考えています。
賃貸物件を長期間所有していれば、いつか高額な修繕が発生します。
外壁。
防水。
給排水設備。
エレベーター。
給水ポンプ。
こうした設備では、数十万円から数百万円単位の費用が必要になることがあります。
だからこそ、修繕費を削減する努力だけでは十分ではありません。
必要な工事が発生した時に、
「それならやりましょう」
と判断できるだけの収益性を普段から確保しておくことも重要です。
当社でも、仮に高額な出費が必要になった際にオーナー様からご快諾いただけるよう、
・空室を減らす
・適正な賃料で成約する
・不要な支出を抑える
・管理コストを精査する
といった日々の収益改善に取り組んでいます。
修繕費をただ削るのではなく、必要な修繕を適切に実施できる賃貸経営にしておくことも重要だと考えています。
管理会社から修繕見積りが届いたら、まず確認していただきたいのは次の5つの視点です。
1.本当に今やる必要があるのか
2.修理と交換のどちらが合理的なのか
3.単価だけでなく、工事内容・数量・追加費用まで含めて価格は妥当なのか
4.写真や動画など現状を確認できる資料があるか
5.長期的な収益にどのような影響があるのか
そして、業者選びではさらに、
「安いかどうか」だけでなく、「工事後まで責任を持って付き合える相手か」
という点も重要です。
修繕費は少なければ少ないほど良い、というものではありません。
必要な工事を先送りすれば、さらに大きな費用につながることもあります。
反対に、業者から勧められた工事を何でも実施すれば、収益は残りません。
重要なのは、
必要な修繕を、適切な時期に、適切な内容と価格で、信頼できる業者に依頼すること。
そして、その支出が物件全体の収益にどのようにつながるのかを見ることです。
管理会社には、見積書をオーナー様へ転送するだけではなく、その見積りを一度自社でも確認し、現状、必要性、価格、数量、追加リスク、選択肢まで整理した上で提案する役割があると当社では考えています。
オーナー様には「見積りが高いか、安いか」だけではなく、
「この工事内容、この業者、この価格で進めることが、賃貸経営として合理的なのか」
という視点でご判断いただきたいと思います。