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賃貸物件を所有していると、
「壊れる前に交換した方が良いのか」
「まだ使えるなら、壊れるまで使った方が得なのか」
という判断に迷うことがあります。
例えば、
・給湯器
・エアコン
・給水ポンプ
・エレベーター
・共用設備
・インターホン
・外壁や防水
・給排水設備
などです。
業者から、
「そろそろ交換時期です」
と言われても、まだ正常に動いていれば、
「本当に今交換する必要があるのか」
と思うのは当然です。
一方で、壊れるまで使った結果、突然停止し、入居者様に大きなご不便を掛けたり、緊急工事となって通常より費用が高くなったりすることもあります。
当社では、
「予防修繕」と「壊れてから修理する」のどちらか一方が常に正しいわけではない
と考えています。
重要なのは、
壊れた時にどの程度の影響がある設備なのか、その設備をどこまで延命することが合理的なのか
を見極めることです。
今回は、賃貸経営における予防修繕と事後修繕の考え方について整理してみたいと思います。
予防修繕とは、設備が完全に壊れる前に、点検・補修・交換などを行う考え方です。
例えば、
・劣化した防水を漏水前に補修する
・故障リスクが高まった設備を事前に交換する
・給水ポンプの異常兆候を確認して交換を検討する
・外壁の浮きやひび割れを早めに補修する
といった対応です。
一方、
「実際に壊れてから修理・交換する」
という考え方もあります。
まだ問題なく使用できる設備を早めに交換すれば、残っている使用可能期間を捨てることになります。
ですから、
予防修繕を多くすれば必ず得になるというわけではありません。
設備によっては、壊れるまで使用する方が合理的な場合があります。
例えば、故障しても大きな被害が発生せず、交換も短期間でできる設備です。
少額で交換できる設備や、代替品を確保しやすい設備であれば、
「まだ正常に使用できるのであれば、そのまま使う」
という判断も十分あり得ます。
多少古い設備でも、
・安全上問題がない
・故障しても被害が広がらない
・交換までの期間が短い
・緊急性が低い
のであれば、無理に先回りして交換する必要はありません。
当社でも、設備不具合に対して、調整や部品交換などの延命的な処置を行うことがあります。
「古いから交換する」というだけでは、費用対効果の面で合理的とは限りません。
一方で、壊れてから対応すると大きな問題になる設備もあります。
例えば、
・給水ポンプ
・エレベーター
・給排水設備
・防水
・電気設備
・消防設備
などです。
給水ポンプが完全停止すれば、複数の入居者様が水を使用できなくなる可能性があります。
エレベーターが停止すれば、高層階の入居者様に大きな負担を掛けます。
防水の劣化を放置して雨漏りが発生すれば、建物だけでなく室内や入居者様の家財へ被害が広がることもあります。
こうした設備では、
故障した設備そのものの修理費より、故障した結果として発生する損失や影響の方が大きくなる
可能性があります。
このような場合には、予防修繕の考え方が重要になります。
ただし、ここで一つ理解しておきたいのは、
定期的に点検をしていれば、全ての故障を防げるわけではない
ということです。
当社の管理物件でも、エレベーターが故障したり、給水が停止したりすることがあります。
特に建物が古くなってくると、一つの部品だけではなく、様々な部分が少しずつ劣化してきます。
定期点検を行っていても、
「昨日まで正常に動いていたものが突然止まる」
ということは起こり得ます。
例えば、ある部品を交換しても、別の部品が数か月後に故障することもあります。
これは設備管理の難しいところです。
ですから、予防修繕の目的は、
故障を100%なくすことではありません。
故障する可能性を減らし、重大なトラブルを未然に防ぎ、万一故障した際の影響をできるだけ小さくすることだと考えています。
当社の管理物件でも、先日、気温が40度を超えるような非常に暑い日に、朝8時過ぎから夕方までエレベーターが停止したことがありました。
真夏の高温下でエレベーターが長時間停止すれば、特に高層階にお住まいの入居者様には大きなご負担をお掛けします。
もちろん、故障そのものを起こさないことが理想です。
しかし、機械設備である以上、どれだけ点検や整備をしていても、故障を完全になくすことはできません。
だからこそ、万一故障した時に、
・何が原因だったのか
・現在どのような対応をしているのか
・どのような対策を行ったのか
・今後どのように対応していくのか
をできるだけ分かりやすく入居者様へお伝えすることも重要だと考えています。
単に、
「復旧しました」
と伝えるだけではなく、
原因、対策、今後の方向性まで周知する。
こうした対応を積み重ねることが、入居者様からの信頼にもつながると思います。
故障を起こさないための予防管理はもちろん重要です。
しかし同時に、
万一故障した際にも、隠さず、放置せず、誠実に対応すること
も管理会社に求められる役割だと考えています。
予防修繕をするかどうかを考える時、当社では、
「あと何年使えるか」だけでなく、「もし明日壊れたら何が起こるか」
を見ることが重要だと考えています。
例えば、同じ10万円の設備でも、
A:故障しても一室だけに影響し、短期間で交換できる設備
B:故障すると建物全体が断水し、交換まで数日掛かる設備
では、予防修繕の必要性は全く違います。
つまり、判断する際には、
・故障時の影響範囲
・復旧までの時間
・緊急工事になる可能性
・入居者様への影響
・二次被害の可能性
を見る必要があります。
分かりやすい例がエアコンです。
当社でも、エアコンに不具合があれば必ず新品へ交換するわけではありません。
比較的新しく、少額の部品交換や調整で今後も使用できると判断できれば、修理で対応することがあります。
一方、ルームエアコンでは、メーカーによって補修用性能部品の保有期間を製造打ち切り後10年程度としているケースがあります。
これは「設置から10年経った瞬間に部品がなくなる」という意味ではありませんが、古い機種ほど今後部品を確保できなくなる可能性は高くなります。
そのため当社では、10年以上経過した専有部分のエアコンに不具合があり、修理のために本体の脱着まで必要になるような場合には、その修理費用と今後の再故障リスクを考え、原則として本体交換をご提案しています。
例えば、
故障診断をする。
部品を交換する。
本体を一度脱着する。
数年後に別の部品が故障する。
最終的に新品へ交換する。
となれば、最初から交換した場合より結果的に高くなることがあります。
さらに、その度に入居者様との日程調整や室内作業が必要になります。
逆に、古いからといって正常に動いているものまで交換する必要があるとも考えていません。
実際、当社の管理物件には、40年以上前に設置された業務用エアコンが現在も稼働している部屋もあります。
これは極端な例ではありますが、
「古い=直ちに交換」ではない
ということでもあります。
現在正常に稼働しているのであれば、年数だけで交換を決めるのではなく、状態、部品供給、故障した場合の影響などを見ながら判断することが重要です。
オーナー様から時々、
「管理会社がエアコンを交換する度にメーカーがバラバラになっていますが、問題ありませんか?」
というご質問をいただくことがあります。
結論から言えば、各住戸に独立した一般的なルームエアコンを設置している物件であれば、部屋ごとにメーカーが違っていても実務上大きな問題になることは通常ありません。
例えば、
101号室はダイキン。
102号室は三菱電機。
201号室はパナソニック。
という状態でも、それぞれ独立した機器であれば、必ずしも全室を同じメーカーへ統一する必要はありません。
なぜメーカーがバラバラになるのか。
これは管理会社が適当に機器を選んでいるとは限りません。
その時々で、
・付き合いのある業者が取り扱っているメーカー
・その時点で価格条件の良い機種
・必要な能力に合う機種
・夏場など需要期でも在庫を確保できる機種
などから選定するためです。
特に真夏にエアコンが故障した場合、
「いつものメーカーが入荷するまで待ちます」
というわけにはいかない場合があります。
入居者様が生活している以上、在庫を確保でき、短期間で施工できるメーカーを優先することもあります。
その結果、建物内でメーカーが統一されないことがあります。
むしろ、メーカーを統一することだけを優先して交換時期が遅くなったり、割高な機器を購入したりする方が合理的ではない場合もあります。
ただし、マルチエアコンや集中制御を行っている設備など、機器同士の互換性が必要なシステムでは別途確認が必要です。
大切なのは、
メーカーを揃えることそのものではなく、必要な能力・価格・在庫・施工時期・将来のメンテナンスまで含めて、その時点で合理的な機器を選ぶこと
だと考えています。
エアコンに限らず、
「10年経ったから交換」
「15年経ったから交換」
と、年数だけで一律に判断するのも適切ではありません。
設備の使用状況や設置環境によって、劣化速度は違います。
同じ設備でも、
・使用頻度
・設置環境
・過去の修理履歴
・部品供給状況
・点検結果
によって状態は異なります。
一方で、年数が経過していれば、故障確率や部品供給リスクが高まることも考慮する必要があります。
つまり、
年数は交換を決める絶対的な基準ではありませんが、無視して良い数字でもありません。
年数と現在の状態、そして故障した場合の影響を合わせて判断する必要があります。
予防修繕というと、
「故障する前に全部交換する」
というイメージを持たれるかもしれません。
しかし、予防修繕には、
早めに交換することだけではなく、状態を把握すること
も含まれます。
例えば、
・異音が出ていないか
・漏れがないか
・振動が増えていないか
・腐食していないか
・劣化が進んでいないか
を定期的に確認することで、すぐに交換しなくても、更新時期を予測しやすくなります。
例えば、
「今すぐ交換は必要ないが、2~3年以内には更新を考えた方が良い」
と分かっていれば、オーナー様も事前に資金を準備できます。
突然、
「壊れました。100万円必要です」
と言われるのとでは、経営上の負担が全く違います。
予防修繕の大きなメリットの一つは、
修繕時期をある程度計画できること
です。
故障してから対応すると、
・業者を急いで探す
・部材を急いで手配する
・比較検討する時間がない
・入居者様への対応を急ぐ
という状況になります。
緊急時には、
「多少高くても、この業者にお願いするしかない」
ということもあります。
一方、事前に交換時期が分かっていれば、
・複数社から見積りを取る
・工事時期を調整する
・資金を準備する
・他の工事とまとめる
といった選択肢が生まれます。
つまり予防修繕には、
工事そのものだけでなく、経営判断の時間を確保する効果
もあります。
機械設備であれば、
「動く・動かない」
が比較的分かりやすいと思います。
しかし外壁や防水は違います。
突然壊れるというより、少しずつ劣化していきます。
例えば防水なら、
「雨漏りしてから直せば良い」
と考えることもできます。
しかし、雨漏りが発生した時には既に下地まで水が回っている可能性があります。
外壁についても、ひび割れや浮きを放置した結果、補修範囲が広がることがあります。
こうしたものは、
壊れたかどうかではなく、劣化の程度と将来の被害リスク
で判断する必要があります。
予防修繕との相性が良い分野だと思います。
ここまで読むと、
「それなら早めに全部交換した方が良い」
と思われるかもしれません。
しかし、それも違います。
まだ十分使用できる設備を次々交換していけば、当然修繕費は増えます。
例えば、
「故障率が少し高くなってきたから」
という理由だけで、全戸のエアコンを一斉に交換することが必ずしも合理的とは限りません。
その設備が故障した場合の影響が小さく、個別交換で対応できるのであれば、壊れた部屋から交換する方が合理的な場合もあります。
先ほど触れたように、部屋ごとに異なるメーカーになっても、独立したルームエアコンであれば通常それ自体を問題視する必要はありません。
ですから、
「建物全体で同じ機種に揃えたいから」
という理由だけで、まだ十分使える機器を一斉交換する必要性も薄いと思います。
予防修繕は、
故障リスクをゼロにするために行うものではありません。
支出とリスクのバランスを取るために行うものです。
築年数が経過すると、同時期に設置した設備が一斉に更新時期を迎えます。
この時、
「全部一度に交換するか」
「故障したものから順次交換するか」
という判断が必要になります。
一括交換には、
・工事単価を下げられる可能性がある
・今後の故障対応が減る
・設備年数を揃えられる
というメリットがあります。
一方で、
・まだ使用できる設備まで交換する
・一度の支出が大きくなる
というデメリットもあります。
順次交換なら初期負担は抑えられますが、毎年のように工事対応が続く可能性があります。
どちらが良いかは、
設備の種類、故障時の影響、残存寿命、工事単価、物件の資金状況
によって変わります。
修繕費を考える時に、忘れられがちなのが入居者様への影響です。
例えば古い設備を何度も修理し、
1回目 故障
2回目 再故障
3回目 最終的に交換
となれば、入居者様はその度に、
・管理会社へ連絡する
・業者訪問の日程を調整する
・室内へ業者を入れる
・設備が使えない期間を過ごす
ことになります。
金額だけを見れば延命修理が安くても、入居者様の負担が大きくなれば、満足度低下や退去につながる可能性があります。
ですから、
修繕費+入居者様への影響
まで含めて判断する必要があります。
特に真夏のエアコン故障やエレベーター停止、断水などは生活への影響が大きいため、復旧スピードと情報提供の両方が重要になります。
設備トラブルが起きた場合、まず必要なのは早期復旧です。
しかし、管理会社の仕事は復旧した時点で終わりではないと考えています。
なぜ故障したのか。
どのような処置をしたのか。
再発する可能性はあるのか。
今後どのような対策を考えているのか。
こうした情報を整理して、必要に応じてオーナー様や入居者様へ説明することも重要です。
特にエレベーターや給水設備など、多くの入居者様へ影響する設備では、
「いつ復旧するか分からない」
という状態そのものが大きな不安になります。
全ての情報が最初から分からなくても、
「現在業者が調査しています」
「原因はこの部分と考えられます」
「復旧後はこのような対策を予定しています」
と段階的に説明することはできます。
当社では、
故障そのものだけでなく、故障時の対応まで含めて管理品質
だと考えています。
管理会社の仕事は、
「壊れましたので交換します」
というだけではないと当社では考えています。
例えば、
「今はまだ使えます」
「ただし年数的には更新時期が近いです」
「今すぐ交換する必要はありません」
「次に不具合が出たら交換をお勧めします」
というところまで整理してお伝えする。
あるいは、
「この設備が停止すると影響が大きいため、故障前の更新を検討した方が良い」
と提案する。
これも管理会社の役割だと思います。
全てを早く交換するのでもなく、壊れるまで何も考えないのでもない。
設備ごとに適切な更新時期を考えること
が重要です。
給水設備、エレベーター、外壁、防水など、大きな金額が掛かる設備ほど、
「壊れたので今すぐ100万円必要です」
という状態はできるだけ避けたいものです。
もちろん、故障を完全に予測することはできません。
建物が古くなれば、点検では異常がなかった部品が突然故障することもあります。
しかし、
・設備年数
・点検結果
・過去の不具合
・メーカーの部品供給状況
・業者からの意見
などから、ある程度将来を予測することはできます。
例えば、
「まだ動いているが、更新時期が近い」
という段階でオーナー様へお伝えしておけば、数年掛けて資金準備ができます。
当社では、修繕費を安くすることだけではなく、
高額修繕をできる限り突然の出費にしないこと
も重要なコスト管理だと考えています。
そして最後に重要なのが、物件の収益性です。
どれだけ、
「そろそろ交換した方が良い」
と分かっていても、物件の収益が低ければ、オーナー様も簡単には修繕へ踏み切れません。
空室が多い。
家賃が低い。
固定費が高い。
修繕費が次々発生する。
このような状態では、必要な予防修繕まで先送りになりやすくなります。
逆に、
空室が少ない。
適正な賃料が取れている。
無駄な支出が抑えられている。
十分な手残りがある。
という状態なら、
「今やっておいた方が良いのであれば、やりましょう」
という判断がしやすくなります。
だからこそ当社では、仮に高額な修繕が必要になった場合でもオーナー様にご快諾いただけるよう、日々物件の収益性改善に取り組むことも重要だと考えています。
修繕費を考えることと、収益改善を考えることは別々ではありません。
結局、
「予防修繕と事後修繕のどちらが得なのか」
という問いに対して、一律の答えはありません。
当社では、大きく分けて次のように考えています。
壊れても影響が小さく、すぐ交換できるものは、無理に早く交換しない。
故障すると入居者様や建物全体への影響が大きいものは、予防修繕を検討する。
古い設備でも、合理的に延命できるなら延命する。
ただし、部品供給や再故障リスク、脱着工事などを考えると交換した方が合理的な場合は、無理に延命しない。
高額設備については、突然壊れるまで待つのではなく、更新時期を事前に考える。
そしてもう一つ重要なのが、
どれだけ予防しても、故障を完全になくすことはできない
ということです。
建物が古くなれば、様々な部品が少しずつ劣化し、点検をしていても突然トラブルが発生することがあります。
だからこそ、
故障させないための管理と、故障した時に誠実に対応する管理の両方が必要
だと当社では考えています。
故障が起きたら早急に復旧する。
原因を確認する。
必要な対策を行う。
そして、入居者様へ原因や対応内容、今後についてきちんと説明する。
こうした積み重ねが、入居者様との信頼関係にもつながると思います。
重要なのは、
「今いくら掛かるか」だけではなく、「今後どれだけ掛かる可能性があるか」「壊れた時に何が起こるか」「故障した時にどう対応するか」まで考えること
です。
40年以上稼働する設備がある一方で、10年程度で交換した方が合理的な設備もあります。
つまり、年数だけでは答えは出ません。
予防修繕をし過ぎれば、まだ使える設備を捨てることになります。
反対に、壊れるまで何もしなければ、緊急工事や二次被害によってかえって高くなることがあります。
管理会社に求められるのは、
何でも早く交換することでも、何でも限界まで使うことでもありません。
設備の状態、年数、修理履歴、部品供給状況、故障時の影響、交換費用、入居者様への影響、そして物件全体の収益を見ながら、
どのタイミングで修繕・交換するのが最も合理的かを考え、万一トラブルが起きた時には誠実に対応すること。
これが、これからの賃貸経営における修繕管理で重要になると考えています。