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賃貸経営をしていると、
「入居者に人気の設備ランキング」
「この設備がないと決まらない」
「付けるだけで家賃が上がる」
といった情報を目にすることがあります。
例えば、
・無料インターネット
・宅配ボックス
・オートロック
・モニター付きインターホン
・浴室乾燥機
・温水洗浄便座
・独立洗面台
・エアコン
などです。
もちろん、こうした設備を希望する入居者様は多く、物件によっては非常に有効です。
しかし当社では、
「人気設備ランキングで上位だから付ける」という考え方には慎重であるべき
だと考えています。
なぜなら、ランキングで人気の設備と、
その物件に本当に必要な設備
は必ずしも同じではないからです。
今回は、空室対策や設備投資を考える際に、人気設備ランキングだけで判断してはいけない理由について考えてみたいと思います。
まず考えたいのは、人気設備ランキングが、特定の一棟のために作られたものではないということです。
例えば、
都心の単身者向けマンション。
郊外のファミリー向けアパート。
学生向けワンルーム。
高所得者向け賃貸マンション。
築30年の低価格帯物件。
では、入居者様が求める設備は当然違います。
例えば駅近の単身者向けマンションなら、宅配ボックスの需要は高いかもしれません。
一方、自動車移動が中心となる郊外のファミリー物件では、
宅配ボックスより駐車場2台分を確保できる方が重要
ということもあります。
つまり、
全国的に人気がある設備と、その地域・その物件で成約を左右する条件は別物
です。
ランキングを見る際には、
「人気順位は何位か」
ではなく、
「この物件のお客様にとって必要か」
を考える必要があります。
設備について考える際に重要なのが、家賃帯です。
例えば月額15万円のマンションと、月額4万円のアパートでは、入居者様が期待する設備水準は違います。
高い家賃を支払う物件であれば、
「この家賃なのに、この設備がないのか」
と思われることがあります。
一方、低価格帯の物件であれば、
「設備は多少古くても、家賃が安ければ良い」
という方もいます。
つまり、
設備の必要性は家賃とのバランスで決まる
ということです。
4万円台の物件へ高額な設備を次々追加し、その工事費を回収するために家賃を上げれば、
「それなら新しい物件を借りる」
となる可能性もあります。
設備を増やすことによって、その物件本来の強みである「手頃な家賃」を失ってしまっては意味がありません。
アンケートで、
「付いていたら嬉しい設備は何ですか?」
と聞かれれば、多くの方が便利な設備を選ぶと思います。
例えば、
宅配ボックスがある方が良い。
浴室乾燥機がある方が良い。
無料インターネットがある方が良い。
当然です。
しかし、
「その設備がなければ、その物件を絶対に借りませんか?」
と聞けば、答えが変わることがあります。
例えば、
家賃5万5,000円で宅配ボックスなし。
家賃5万8,000円で宅配ボックスあり。
という2物件があった場合、
3,000円安い方を選ぶ方もいるでしょう。
つまり、
「あれば嬉しい設備」と「なければ成約しない設備」は区別する必要があります。
この違いを考えずにランキングだけを見て設備を追加すると、過剰投資になる可能性があります。
設備投資を検討する際には、
「この設備を付けると家賃はいくら上げられるのか」
という視点が必要です。
例えば30万円掛けて設備を導入し、
家賃が月額5,000円上がるのであれば、年間6万円の増収です。
単純計算では5年で30万円になります。
一方、30万円掛けても家賃が全く変わらないのであれば、その設備投資によって何を得られるのかを別に考える必要があります。
例えば、
・空室期間が短くなる
・退去が減る
・競合物件との差別化になる
のであれば、投資する意味はあります。
しかし、
家賃も上がらない。
空室期間も変わらない。
入居者募集にもほとんど影響しない。
のであれば、投資効果は限定的です。
当社では、
設備を付けたという事実ではなく、その設備によって収益がどう変わるのか
を見ることが重要だと考えています。
人気設備としてよく挙げられるものに、無料インターネットがあります。
入居者様にとっては便利です。
特に学生や単身者向け物件では、募集上のメリットになることがあります。
しかし、オーナー様にとっては当然無料ではありません。
初期工事費。
月額利用料。
設備更新。
契約期間。
解約条件。
などがあります。
例えば毎月1万円の費用が掛かる場合、年間12万円です。
10年間なら120万円になります。
それによって空室期間が短縮したり、家賃を維持できたりするのであれば合理的です。
しかし、無料インターネットについては、単に「導入されているかどうか」だけでなく、実際に十分な通信品質を確保できるかも重要です。
物件全体で回線を共有する方式などでは、入居率が高くなった場合や、夜間など利用が集中する時間帯に通信速度が低下することがあります。
その結果、
「無料インターネットは付いているものの、速度に不満がある」
という入居者様が、ご自身で別途Wi-Fiサービスを利用したり、個別にインターネット回線を引き込んだりするケースもあります。
そうなると、
「無料インターネット付き」という設備自体が、入居者様にとってどこまで価値のあるものなのか
を改めて考える必要があります。
もちろん、十分な速度と安定性が確保されており、入居者様の満足度が高いのであれば有効な設備です。
一方で、
導入費用や月額費用をオーナー様が負担しているにもかかわらず、入居者様が結局別回線を契約しているのであれば、費用対効果は再検討しても良いと思います。
無料インターネットについても、
「人気設備だから導入する」のではなく、通信品質、利用状況、費用、入居者層まで含めて本当に必要かを検討する
ことが重要です。
宅配ボックスも人気設備の一つです。
ネット通販の利用が増えた現在、便利な設備であることは間違いありません。
しかし、物件によっては、
設置場所がない。
工事費が高い。
戸数に対して必要以上に大きな設備になる。
管理や故障対応が必要になる。
というケースもあります。
例えば4戸の小規模アパートと、50戸のマンションでは、宅配ボックス一台あたりの費用対効果は違います。
また、比較的在宅時間の長い入居者層が多い物件と、日中不在になる単身者が多い物件でも価値は変わります。
設備そのものではなく、
「この物件で、どの程度使われるのか」
を考える必要があります。
オートロックも人気設備として挙げられることがあります。
特に防犯面を重視する方にとっては重要な条件になることがあります。
しかし築古物件へ後からオートロックを導入しようとすると、大きな工事になることもあります。
工事費に対して家賃がどの程度上がるのか。
現在の物件の入居者層に本当に求められているのか。
防犯カメラやモニター付きインターホンなど、より少ない費用で一定の効果が得られる方法はないのか。
こうした比較が必要です。
ランキング上位だから、その設備そのものを導入する
のではなく、
「入居者様が求めている目的は何か」
まで考えると、別の方法が見つかることがあります。
当社では、設備投資を考える際に、
「何を追加するともっと良くなるか」
だけではなく、
「今、この物件に何が足りていないのか」
を見ることが重要だと考えています。
例えば、
給湯設備が古い。
エアコンが故障寸前。
インターホンが鳴らない。
共用灯が暗い。
駐輪場が整理されていない。
といった状態なのに、新しい人気設備を追加しても、優先順位が逆だと思います。
まず、
安全に生活できる。
正常に使える。
清潔である。
必要な設備がきちんと動く。
という基本を整える。
その上で余力があれば、付加価値となる設備を考える。
基本性能より先に付加価値設備へ投資しないこと
が重要です。
築古物件では、
「新築に付いている設備を全部付けないと競争できない」
と考えてしまうことがあります。
しかし、築古物件には、
・家賃が手頃
・部屋が広い
・立地が良い
・収納が多い
など、新築とは違う強みがあることがあります。
築古物件に新築と同じ設備を全て付ければ、当然かなりの費用が掛かります。
その費用を家賃へ反映しようとしても、周辺相場には上限があります。
結果として、
リフォームや設備にお金を掛け過ぎたのに、家賃では回収できない
という状態になりかねません。
築古物件は、新築のコピーを目指すのではなく、
築古としての価格競争力を残しながら、必要な弱点だけ補う
方が合理的な場合があります。
空室があると、
「設備を追加すれば決まるのではないか」
と考えることがあります。
しかし、そもそも空室の原因が設備ではない場合があります。
例えば、
・募集賃料が高い
・写真が悪い
・インターネット掲載が少ない
・仲介会社へ情報が伝わっていない
・募集時期が悪い
・駐車場条件が合わない
といった問題です。
その状態で設備を追加しても、空室問題は解決しません。
問い合わせ自体がないのか。
問い合わせはあるのに内覧されないのか。
内覧はあるが申込みにならないのか。
まずここを確認します。
例えば内覧が多いのに、
「独立洗面台がないのでやめました」
という声が繰り返し出ているのであれば、設備改善を検討する意味があります。
しかし、そもそも閲覧や問い合わせがないのであれば、設備以外の問題を先に確認するべきです。
人気ランキングは参考になります。
しかし当社では、それ以上に、
実際にその物件を検討したお客様の反応
を見ることが重要だと思っています。
例えば、
「宅配ボックスがないからやめた」
という話が何件も続く。
「モニター付きインターホンが欲しい」
という声が繰り返し出る。
こうした具体的な情報があれば、設備投資を検討する根拠になります。
ただし、仲介会社からの意見についても、そのまま全て鵜呑みにするのではなく、複数の反響や成約状況を見て判断する必要があります。
一人の意見だけで設備を追加するのではなく、
複数の反響から共通する問題を見つける
ことが重要です。
設備とは少し違いますが、空室対策としてアクセントクロスを提案されることがあります。
しかしアクセントクロスも、
「おしゃれだから」
「最近人気だから」
という理由だけで採用するものではないと考えています。
家具やカーテンと合わせづらいという意見もあります。
設備も同じです。
人気がある。
流行している。
他の物件も付けている。
これだけでは投資判断の理由としては弱いと思います。
「なぜ、この物件に必要なのか」
まで説明できる設備を導入するべきです。
設備投資では、導入費だけに目が行きがちです。
しかし設備を付ければ、その後、
・修理
・交換
・保守
・電気代
・通信費
などが発生することがあります。
設備が増えれば、将来故障する箇所も増えます。
例えば高度な設備を多数導入すれば、入居者様にとっては便利かもしれません。
一方で10年、15年後には、複数設備が一斉に更新時期を迎える可能性もあります。
設備を追加する際には、
設置費用だけではなく、保有期間全体で掛かる費用
まで考える必要があります。
設備投資や修繕費については、既存の仕組みを活用できる場合もあります。
例えばプロパンガスを採用している物件では、ガス会社によって給湯器やエアコンなどについて設備保証や修理対応を組み込んだプランを用意しているケースがあります。
こうした仕組みを合理的に活用できれば、オーナー様の設備負担を抑えられる可能性があります。
ただし、
「設備が付くから得」
と単純に考えるのではなく、
契約条件。
保証内容。
契約期間。
入居者様のガス料金への影響。
などまで含めて判断する必要があります。
ここでも、
設備だけを単独で見るのではなく、物件全体の収支で考える
ことが重要です。
設備が古くなってくると、
キッチンも古い。
浴室も古い。
エアコンも古い。
洗面台も古い。
という状態になることがあります。
だからといって、全てを一度に交換する必要はありません。
例えば、
今回の退去ではキッチン。
次回の退去では洗面台。
その次は浴室。
エアコンは故障時。
というように、数回に分けて物件を改善する方法もあります。
一度の支出を抑えながら、募集結果を見て次の設備投資を判断できます。
完成形を一度に目指すのではなく、収益を得ながら段階的に改善する。
これも、設備投資のやり過ぎを防ぐ方法だと思います。
管理会社から、
「この設備を付ければ決まりやすくなります」
と提案された場合には、次のような点を確認してみると良いと思います。
・導入費はいくらか
・維持費はいくら掛かるか
・想定賃料はいくら上がるのか
・空室期間はどの程度短縮できるのか
・競合物件の導入状況はどうか
・実際のお客様から要望が出ているのか
・代替手段はないのか
・導入後の品質や性能は十分か
例えば無料インターネットであれば、
「付いているか」
だけでなく、
「実際に入居者様が快適に使える仕様になっているか」
まで確認する必要があります。
ここまで確認すると、
「人気ランキングで上位だから」
という理由だけとは違った判断ができます。
管理会社にも、
ランキングをオーナー様へ転送するだけではなく、その物件で本当に必要かを判断する役割
があると当社では考えています。
空室対策というと、
「何か新しいことをしなければならない」
と考えがちです。
しかし、
設備を付けない。
今ある設備を清掃する。
壊れたところだけ直す。
募集写真を変更する。
賃料査定をやり直す。
仲介会社への周知方法を変える。
という方法で改善できることもあります。
当社では、設備を増やすこと自体を空室対策とは考えていません。
むしろ、
費用を掛けずに改善できるのであれば、その方がオーナー様の利益は大きい
からです。
必要な設備なら付ける。
必要性が低ければ付けない。
この判断も管理会社には必要だと思います。
人気設備ランキングそのものに意味がないわけではありません。
現在の入居者様がどのような設備を求めているのかを知る上で、一つの参考資料になります。
しかし、
ランキング上位=全ての物件に導入すべき設備
ではありません。
物件の立地。
家賃帯。
築年数。
間取り。
入居者層。
競合物件。
現在の募集状況。
設備導入費。
維持費。
実際の性能。
そして、導入後に得られる収益。
これらを総合的に考える必要があります。
無料インターネット一つを取っても、
「無料だから喜ばれる」
だけではなく、
実際の通信速度は十分なのか。
利用が集中した時にも安定するのか。
入居者様が別回線を契約するほどではないのか。
そこまで見て初めて、その設備の本当の価値が分かります。
人気設備ランキングを見る時に大切なのは、
「何位なのか」ではなく、「なぜ人気なのか。そして、その理由が自分の物件にも当てはまるのか」
と考えることです。
賃貸経営では、設備をたくさん付けることが目的ではありません。
必要な設備を必要なだけ整え、
適正な家賃で。
適切な期間で成約し。
その結果としてオーナー様へ利益を残す。
これが目的です。
当社では、
「人気だから付ける」のではなく、「この物件の収益改善に本当に必要だから付ける」
という考え方で設備投資を判断することが、やり過ぎを防ぎ、長期的に安定した賃貸経営につながると考えています。