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賃貸借契約書は一度作れば終わりではない?契約内容を見直すポイント

2026/10/9

賃貸物件を長く所有していると、

「昔からこの契約書を使っている」
「前の管理会社から引き継いだ書式をそのまま使っている」
「特にトラブルもなかったので変更していない」

というケースがあります。

もちろん、契約書は頻繁に内容を変えれば良いものではありません。

しかし当社では、

賃貸借契約書は一度ひな形を作れば終わりではなく、実際の管理状況に合わせて定期的に見直す必要がある

と考えています。

なぜなら、賃貸借契約書は単に、

「家賃はいくら」
「契約期間は何年」

と決めるだけの書類ではないからです。

入居中のルール。

修繕時の対応。

退去時の原状回復。

駐車場。

ゴミ出し。

設備の使用方法。

保証会社。

解約。

こうした日々の管理にも関係します。

実際に管理をしていると、

「契約書にもう少し明確に書いておけば良かった」

と感じる場面が出てきます。

その経験を次の契約へ反映し、定期的に特約も見直して、必要と思われる内容をあらかじめ契約書へ入れておくことが重要だと考えています。

今回は、賃貸借契約書を見直す際に確認しておきたいポイントについて考えてみたいと思います。

1.契約書は「トラブルが起きた時だけ見る書類」ではない

賃貸借契約書というと、

家賃滞納。

騒音。

退去。

原状回復。

など、何か問題が起きた時に初めて確認する書類というイメージがあるかもしれません。

しかし本来は、

入居中の運用ルールを貸主・借主双方で確認するための書類

でもあります。

例えば、

自転車はどこへ置くのか。

駐車場はどの区画を使用するのか。

ペットは飼えるのか。

事務所として利用して良いのか。

修理が必要な時は誰へ連絡するのか。

解約は何か月前に連絡するのか。

こうした事項が曖昧であれば、トラブルが起きた時に、

「そんな話は聞いていない」

ということになりやすくなります。

契約書は、トラブルの後に使うものではなく、

トラブルを起こしにくくするために事前にルールを共有するもの

だと考える方が良いと思います。

2.まずは国土交通省をベースにした標準的なひな形を使う

賃貸借契約書については、管理会社が一から独自に作れば良いというものでもないと当社では考えています。

国土交通省には「賃貸住宅標準契約書」が用意されています。

これは民間賃貸住宅における賃貸借契約書のひな形として作成され、その後も原状回復をめぐる問題や民法改正、家賃債務保証業者を利用する契約の増加などを踏まえて改訂されてきたものです。

また、こうした国土交通省の標準契約書などを踏まえ、宅建協会をはじめとした不動産業者団体でも、実務で使用する契約書のひな形が用意されています。

当社でも、宅建協会のひな形を基本として使用しています。

賃貸借をめぐっては、長年にわたり様々な紛争や実務上の問題が積み重なっています。

そのため当社では、

個々の管理会社が独自の考えだけで一から契約書を作るより、国土交通省の標準契約書をベースとした業界団体のひな形を土台にするのが基本的には良い

と考えています。

その上で、物件ごとに必要な特約や使用ルールを加えていく。

この方法が実務的だと思います。

3.標準ひな形には、長年の実務が反映されている

標準的な契約書を使用する意味は、

「皆が使っているから」

だけではありません。

賃料。

共益費。

敷金。

禁止・制限行為。

修繕。

契約解除。

借主からの解約。

明渡し。

原状回復。

貸主の立入り。

など、賃貸借で問題になりやすい基本的な事項について、一定の考え方があらかじめ整理されています。

つまり、

過去に問題になってきた事項を一から考え直す必要がない

ということです。

これを全て無視して独自の契約書を作るよりも、まず標準的な書式を利用した上で、

「この物件には何を追加する必要があるのか」

と考える方が合理的です。

契約書についても、ゼロから作ることより、

信頼できる土台を使い、そこから実務に合わせて調整すること

が重要だと思います。

4.定期借家契約の「中途解約」も標準ひな形を見ると考え方が分かる

標準的なひな形を使う意味が分かりやすい例の一つが、定期借家契約です。

定期借家契約は、期間満了によって更新なく終了する契約です。

期間途中の解約についても普通借家とは考え方が異なり、法律上、一定の居住用建物について転勤、療養、親族の介護等のやむを得ない事情がある場合には、借主から中途解約を申し入れられる制度があります。その他の場合は、中途解約に関する特約があればその定めに従うことになります。

一方、国土交通省の「定期賃貸住宅標準契約書」では、借主から1か月前に解約を申し入れることで中途解約できる条項が設けられています。

つまり、

「定期借家契約だから契約期間途中では絶対に解約できない」

と単純に考えるだけではなく、

実際に運用しやすい契約内容をあらかじめ定めておく

という考え方が標準ひな形にも反映されています。

こうした点から見ても、法制度や長年の実務を踏まえて作られている標準的なひな形を利用する意味は大きいと思います。

5.大手系の「簡潔な契約書」にもメリットと注意点がある

一方、大手系の管理会社などでは、自社指定の契約書ひな形を持っていることがあります。

例えば、A3用紙の両面程度にまとめるなど、比較的簡潔な契約書を使用しているケースも見かけます。

管理戸数が多く、毎月大量の契約を処理する会社であれば、

契約内容を標準化する。

記入箇所を減らす。

確認作業を統一する。

契約担当者による差を少なくする。

といった意味で、簡潔な書式にすることには合理性があります。

契約書が短いから悪いということではありません。

むしろ、内容が整理されていて、借主様にも分かりやすいというメリットもあります。

ただし、

大量の契約を効率よく処理できることと、万一のトラブルに必要な内容が十分網羅されていることは別の問題

です。

例えば、

駐車場の特殊な使用方法。

定額水道料。

残置物。

店舗と住宅が混在する物件特有のルール。

特殊な設備。

共用部分の使用方法。

過去に実際に発生したトラブルへの対策。

など、個々の物件固有の事情までは、全社共通の簡潔な契約書だけでは拾い切れないことがあります。

そのため重要なのは、

「大手だから契約書も大丈夫だろう」

でも、

「契約書が短いから不十分だろう」

でもありません。

その契約書で、その物件に必要な内容まで本当にカバーできているか

を見ることです。

また、契約書本体が簡潔でも、

別紙特約。

使用細則。

駐車場使用規則。

入居のしおり。

保証会社との契約。

などで必要な内容を補完しているケースもあります。

ですから、契約書のページ数だけで判断するのではなく、

契約関係書類全体を見て、必要なルールとリスク対策が整理されているか

を確認することが重要です。

効率化は必要です。

しかし契約業務では、

「処理しやすいこと」と「万一に備えられていること」の両立

が必要だと考えています。

6.標準ひな形を使っても「そのままで完成」ではない

一方で、

「宅建協会の契約書を使っているから何も確認しなくて良い」

ということでもありません。

実際の物件にはそれぞれ事情があります。

例えば、

定額水道料がある。

駐車場がある。

専用区画と共用区画がある。

店舗と住居が混在している。

ゴミ出し方法に特殊なルールがある。

設備に特殊な使用方法がある。

といった物件もあります。

そのため、

標準的な契約書をベースにしながら、その物件固有の運用を反映させる

必要があります。

ひな形があるから安心ではなく、実際の管理方法と一致しているかを見ることが重要です。

7.管理会社が変わった時こそ契約内容を確認する

管理会社変更の際には、既存の賃貸借契約書を引き継ぐことになります。

一方で、新規入居者様との契約については、

これまでの契約内容を一度確認する良い機会

になります。

例えば、

現在は利用していない管理会社の連絡先が残っている。

既に変更された家賃振込先が記載されている。

現在の運用と違うゴミ出しルールが書かれている。

使用していない保証制度について記載されている。

といったことがあります。

契約書と実際の管理方法が違えば、入居者様も混乱します。

管理開始時には、建物だけでなく、

契約書の現況調査

も必要だと思います。

8.賃料だけでなく「支払方法」まで明確にする

契約書では当然、賃料や共益費を記載します。

しかし実務上は、

いくら払うか

だけではなく、

どうやって払うのか

も重要です。

例えば、

振込み。

口座振替。

保証会社による収納代行。

などがあります。

また、

振込手数料は誰が負担するのか。

口座振替日はいつなのか。

残高不足だった場合はどうなるのか。

といった部分も、できるだけ明確にしておく方が良いと思います。

昔ながらの契約書では、

「毎月末日までに指定口座へ振り込む」

だけになっていることがあります。

しかし現在では口座振替や保証会社の収納代行など、集金方法も変わっています。

契約書についても、

現在の管理方法に合わせて見直す

必要があります。

9.保証会社を利用するなら契約書との整合性を見る

現在では、家賃債務保証会社を利用する契約も多くなっています。

保証会社を利用する場合には、

賃貸借契約書。

保証委託契約。

収納方法。

更新時の手続き。

などが矛盾していないか確認する必要があります。

例えば、

賃貸借契約書には振込みと書かれている。

実際には保証会社の口座振替になっている。

という状態では、どちらが正しいのか分かりにくくなります。

保証会社を利用すること自体だけではなく、

契約書から日々の運用まで一つの仕組みとして整えること

が重要です。

10.「禁止事項」は実際に起きる問題から考える

賃貸借契約書には、多くの場合、禁止又は制限される行為が記載されています。

例えば、

無断転貸。

用途変更。

騒音。

危険物の持込み。

無断増改築。

などです。

しかし、物件によって実際に起こりやすい問題は違います。

例えば、

共用廊下への私物放置。

駐輪場以外への自転車駐輪。

契約区画以外への駐車。

来客車両の長時間駐車。

ゴミ出しルール。

喫煙。

ペット。

楽器。

事務所利用。

民泊等への利用。

などです。

管理を続けていく中で何度も同じ問題が起きるのであれば、

契約書や使用細則で、もう少し明確にしておく必要がないか

検討して良いと思います。

11.特約は「トラブルが起きてから」ではなく事前に見直す

当社では、特約についても一度作ったら終わりではないと考えています。

管理を続けていると、

「この点は契約時にもう少し明確にしておいた方が良かった」

ということが出てきます。

その都度、

「今回は仕方がなかった」

で終わらせるのではなく、

次回以降の契約ではどうするべきか

を考えることが重要です。

例えば、

駐車場の使用方法。

共用部への私物放置。

退去時の清掃。

設備の取扱い。

連絡先変更。

ペット。

喫煙。

短期解約。

残置物。

など、物件や入居者層によって必要となる特約は変わります。

そのため当社では、

定期的に特約を見直し、今後起こり得る問題について必要な内容をあらかじめ契約書へ入れておく

ことが大切だと考えています。

何か問題が起きてから、

「今後は気を付けましょう」

とするだけではなく、

次の契約から同じ問題が起こりにくい仕組みにする。

この積み重ねによって、契約書の精度も少しずつ上がっていきます。

12.駐車場は「何番を貸すか」だけでは足りないことがある

駐車場付き物件では、

「10番区画を貸します」

だけでは十分でないことがあります。

例えば、

区画線を越えて駐車しない。

共用区画には長時間駐車しない。

来客車両の利用方法。

車両変更時の届出。

大型車を駐車して良いか。

無断で第三者へ使用させない。

といったルールです。

特に複数の入居者様が利用する駐車場では、一人のルール違反が別の入居者様への迷惑につながります。

現場で起きた問題を契約書や駐車場使用規則へ反映する。

こうした積み重ねによって、同じトラブルを減らすことができます。

13.ゴミ・駐輪・共用部についても曖昧にしない

共用部分については、

「常識の範囲で利用してください」

だけでは、人によって常識が違います。

例えば、

廊下に傘立てを置く。

玄関前に物を置く。

子供の遊具を置く。

自転車を階段下へ置く。

粗大ゴミを一時的に置く。

こうした行為を、

「少しくらいなら良い」

と考える人もいれば、

「共用部分なので駄目」

と考える人もいます。

そのため、管理上重要な事項については、

できるだけ具体的なルールにしておく

方が運用しやすくなります。

14.修繕時の連絡ルールも決めておく

設備が故障した際には、

「自分で業者を呼んでしまいました」

というケースもあります。

しかし、借主が独自に修理を依頼すると、

オーナー様負担なのか。

入居者様負担なのか。

工事内容は適切だったのか。

費用は妥当だったのか。

という問題が出ることがあります。

そのため、

設備故障や漏水などが発生した場合には、

まず管理会社へ連絡する。

緊急時はどこへ連絡する。

というルールを契約時に共有しておくことが重要です。

また、

異常を発見した場合には速やかに連絡していただく。

ということも重要です。

例えば小さな漏水を長期間放置すれば、被害が広がることがあります。

入居者様から早く情報をいただくことも建物管理の一部

です。

15.設備なのか「残置物」なのかを明確にする

中古物件や築古物件では、

前の入居者様やオーナー様が設置した設備が残っていることがあります。

例えば、

エアコン。

照明器具。

温水洗浄便座。

ガスコンロ。

食器棚。

などです。

これが、

賃貸設備なのか。

残置物なのか。

が曖昧だと、故障した時にトラブルになります。

入居者様から見れば、

「部屋に付いていたのだから大家さんが直してくれる」

と思うこともあります。

一方、貸主側は、

「残置物なので修理しません」

と考えているかもしれません。

こうした認識の違いを防ぐためにも、

設備として貸すものと、残置物として扱うものを契約時に明確にする

ことが重要です。

16.原状回復は特に契約内容を確認する

賃貸借契約でトラブルになりやすいものの一つが、退去時の原状回復です。

例えば、

ハウスクリーニング。

エアコンクリーニング。

故意・過失による損傷。

ペット飼育による損傷や臭い。

喫煙による汚損。

などについて、契約書や特約でどう扱うのか。

曖昧なまま退去時を迎えるより、契約時に分かりやすく説明しておく方がトラブルを防ぎやすくなります。

ただし、

特約に書けば何でも借主負担にできるということではありません。

そのため、古い契約書に入っている特約をそのまま使い続けるのではなく、

現在も妥当な内容なのかを定期的に確認すること

が重要です。

17.「何でも借主負担」と書けば良いわけではない

トラブルを避けようとして、

「修繕費は全て借主負担」
「退去時は全て新品に戻す」

というように、貸主側に有利な条項を大量に入れれば安心するようにも思えます。

しかし契約書は、

厳しく書けば書くほど良いものではありません。

大切なのは、

貸主に一方的に有利にすることではなく、

どこからどこまでが誰の責任なのかを明確にすること

です。

分かりやすい契約書の方が、結果的に管理もしやすくなります。

18.解約条件は実際の募集期間も考えて決める

契約書では、

「退去する場合は○か月前までに通知する」

という解約予告期間を定めます。

これも昔の契約書をそのまま使っていることがあります。

例えば、

1か月前。

2か月前。

3か月前。

どれが良いかは、契約形態や物件によって考え方が変わります。

オーナー様側から見れば、長い方が次の募集期間を確保できます。

一方、借主側から見れば、あまり長ければ住み替えしづらくなります。

また、短期解約違約金についても、

なぜ必要なのか。

どの期間まで対象とするのか。

金額はどうするのか。

を考える必要があります。

昔の契約書に書いてあるからそのまま使うのではなく、現在の募集条件と整合しているか

を見ることが重要です。

19.消防設備点検や修繕のための入室ルールも重要

共同住宅では、

消防設備点検。

設備修理。

漏水調査。

建物点検。

などで、入居者様に室内への立入りへ協力していただく必要がある場合があります。

もちろん、管理会社やオーナー様が自由に室内へ入って良いということではありません。

入居者様のプライバシーには十分な配慮が必要です。

一方で、建物の安全維持や必要な修繕のために協力をお願いする場面があります。

そのため、

どのような場合に立入りをお願いすることがあるのか

を契約時から明確にしておくことも大切です。

20.連絡先変更の届出も意外に重要

長期入居になると、

電話番号が変わる。

勤務先が変わる。

緊急連絡先が変わる。

同居人が増える。

ということがあります。

しかし、変更届が出されないまま何年も経過することがあります。

その状態で、

漏水。

火災。

設備故障。

滞納。

などが発生すると、連絡が取れないという問題が起こります。

そのため契約書では、

連絡先や届出事項に変更があった場合の届出義務

を明確にしておくことも重要です。

契約した時の情報を、そのまま何十年も正しいと思わないことです。