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賃貸経営では、空室を埋めることに注目が集まりがちです。
もちろん満室にすることは非常に重要です。しかし当社では、満室になった後の管理こそ、その物件の収益性に大きな差が出ると考えています。
満室になったから何もしなくて良いわけではありません。
むしろ、せっかく入居していただいた方に長く住んでいただき、賃料を維持し、建物の状態を良好に保ち、次の空室をできるだけ減らすことが重要です。
募集で入居者様を決めることが「入口」なら、入居中管理はその状態を維持する仕事です。
満室になった瞬間は、オーナー様にとって一つの成果です。
しかし、その入居者様が半年後に退去してしまえば、再び原状回復費や募集費、空室損失が発生します。
そのため、賃貸経営では「何戸決めたか」だけではなく、どれだけ安定して住み続けてもらえるかを見る必要があります。
満室を作る管理と、満室を維持する管理は別の仕事です。
入居者様が退去する理由は、転勤や結婚など管理会社では防げないものもあります。
一方で、設備故障への対応が遅い、共用部が汚れている、相談しても返事がないなど、日常管理が不満につながることもあります。
設備が故障しない物件を作ることはできません。
重要なのは、故障した時に状況を確認し、必要な対応を早く行い、入居者様へ現在の状況や今後の予定を説明することです。
トラブルをゼロにすることより、トラブルが起きた時にどう対応するかの方が現実的には重要だと思います。
入居者様は室内だけで生活しているわけではありません。
毎日、エントランスや廊下、階段、駐輪場、ゴミ置場などを使います。
そのため、共用部が汚れていたり、放置物が増えたり、照明が切れたままになっていたりすると、少しずつ物件への印象が悪くなります。
反対に、築年数が経過していても、共用部がきれいに保たれていれば印象は大きく変わります。
当社では、「古いこと」と「管理されていないこと」は別だと考えています。
物件巡回も重要です。
ただ現地へ行き、「異常なし」と記録するだけでは十分ではありません。
以前よりゴミが増えていないか、長期間動いていない自転車はないか、郵便物が溜まっていないか、駐車場の使われ方に変化はないかなど、普段と違うものに気付くことが重要です。
こうした小さな変化が、将来のトラブルや管理上の問題を早期に発見するきっかけになることがあります。
巡回は、回数以上に「何に気付き、どう対応したか」が重要だと思います。
清掃についても、単に床を掃くだけの仕事ではありません。
清掃担当者は定期的に物件を見ています。
そのため、破損や漏水、放置物、虫の発生など、管理会社が気付いていない変化を発見してくれることがあります。
当社では、清掃や外注業務についても細かな指示だけで縛るのではなく、ある程度現場に裁量を持ってもらい、「物件をより良くするために何ができるか」を考えてもらえる関係を大切にしています。
満室であっても、家賃が入っていなければ本当の意味で安定稼働とは言えません。
家賃滞納は、金額が大きくなってから対応するほど問題が複雑になります。
そのため、口座振替や保証会社などを活用しながら、未払いが発生した段階で早く確認できる仕組みを作ることが重要です。
当社では、滞納対応を担当者の記憶や催促だけに頼らず、仕組みとして管理することが必要だと考えています。
入居中管理では、騒音などの苦情対応も重要です。
こうした問題では、苦情を言う側にも「まず話を聞いてほしい」「困っていることを理解してほしい」という気持ちがあることがあります。
そのため、すぐに結論を出すのではなく、ある程度話を聞き、いわゆるガス抜きの時間を設けることも必要だと思います。
一方で、苦情を言われる側へ強い言葉で伝えすぎれば、相手も感情的になり、問題がさらに大きくなることがあります。
管理会社としては、どちらか一方の感情に引っ張られるのではなく、事実関係を確認しながら、双方が必要以上に感情的にならないようバランスを取ることが重要です。
苦情対応の中には、電話口で一方的に話し続けられたり、強い口調でまくしたてられたりして、正確な事実確認や受け答えが難しくなるケースもあります。
そのような場合には、無理に電話だけで対応を続けるのではなく、
「状況を正確に確認するため、メールや書面で内容を送ってください」
とお願いする方法もあります。
文章にしていただくことで、いつ、どこで、何があったのかを整理しやすくなり、後から「言った・言わない」という問題も減らせます。
管理会社側も、落ち着いて内容を確認した上で回答できます。
感情的なトラブルでは、管理会社の何気ない一言が別の意味で受け取られたり、一部分だけを切り取られたりすることがあります。
そのため、内容によっては電話で即答せず、一度整理して文章で回答する方が良い場合があります。
現在では、AIなどを活用して、文章の表現が強すぎないか、誤解を招く表現になっていないかを確認することもできます。
もちろん、最終的な判断までAIに任せるという話ではありません。
感情的な相手に対して不用意な言葉を返さず、事実と管理会社としての見解を整理して伝えるための補助として活用するという考え方です。
入居者対応では、「入居者様の話をしっかり聞くこと」が大切です。
しかし、それと「何時間でも電話に付き合うこと」は別だと思います。
一人の入居者様との対応に毎日のように長時間を費やせば、担当者が疲弊し、他の入居者様やオーナー様への対応にも影響します。
そのため、電話だけに依存せず、メールや書面へ切り替える、社内で情報を共有する、必要に応じて対応窓口を整理するなど、担当者が冷静に継続対応できる仕組みを作る必要があります。
良い入居者対応とは、担当者が我慢し続けることではありません。
管理会社として、威圧的な態度を取るべきではありません。
入居者様から厳しい意見をいただいたとしても、管理会社側まで感情的になれば問題は大きくなります。
一方で、
管理会社では対応できない要求。
契約上認められない要求。
オーナー様に不合理な負担を求める要求。
などについては、曖昧な回答を続けるのではなく、応じられないものはきっぱりと断ることも必要です。
何でも受け入れることが良い管理ではありません。
説明すべきことは説明し、できることとできないことを明確にする。
その上で、相手を必要以上に刺激しない伝え方を考えることが重要です。
騒音、ゴミ出し、無断駐車、駐輪場など、入居中には様々な問題が起こります。
その都度注意することも必要ですが、同じ問題が繰り返されるのであれば、ルールや契約内容、案内方法そのものを見直す必要があります。
例えば駐車場トラブルが繰り返されるのであれば、区画表示や契約方法を見直す。ゴミ出し問題なら掲示やルール説明を見直す。
一度起きた問題を、次に起きにくい仕組みへ変えていくことも入居中管理です。
エアコンや給湯器などの設備は、いずれ故障します。
故障が起きた時に修理して終わりではなく、使用年数や他の部屋の設備状況も確認します。
同時期に設置した設備が複数あるのであれば、次の故障が起きる可能性も考えておく必要があります。
ただし、何でも予防交換すれば良いわけではありません。
修理費、交換費、故障時の影響、残存期間などを考え、壊れてから対応するものと、先回りした方が良いものを分けることが重要です。
満室になると、現在の賃料をそのまま維持し続けることがあります。
しかし周辺相場が上昇しているのであれば、更新や退去のタイミングで賃料を見直す余地があります。
反対に、相場より高い状態で入居していただいているのであれば、無理な条件変更で退去を招かない方が良い場合もあります。
満室だから賃料を見なくて良いのではなく、満室だからこそ現在の条件が適正なのかを定期的に確認する必要があります。
大きな設備故障などが起きた時、入居者様へ理解をお願いしなければならないことがあります。
その時だけ丁寧に対応しても、普段の管理が悪ければ信頼は得にくいと思います。
日頃から共用部が管理されている、問い合わせに返事がある、問題があれば対応してもらえる。
こうした積み重ねがあって初めて、トラブル時にも一定の理解を得やすくなります。
トラブルが起きてから信頼を作るのではなく、何もない時から信頼を積み重ねる。
これも入居中管理の大切な役割です。
管理会社の違いが出やすいのは、大きなトラブルが起きた時だけではありません。
むしろ、何も問題が起きていない時に何をしているかが重要です。
建物を見ているか。清掃状態を確認しているか。賃料や契約条件を見直しているか。固定費は適正か。保証や収納方法に問題はないか。
満室だから管理会社が何もしなくて良い、ということではありません。
良い状態を維持すること自体が管理業務だからです。
満室を作るためには募集力が必要です。
しかし、その満室を維持するためには、入居中の管理力が必要です。
設備故障への対応、清掃、巡回、家賃管理、入居者トラブルへの対応、契約やルールの改善。こうした日々の積み重ねによって、物件の状態は少しずつ変わっていきます。
特に苦情対応では、単に相手の話を聞くだけでも、強く注意するだけでも十分ではありません。
苦情を言う側の話を受け止めつつ、言われる側を必要以上に感情的にさせない。正確なやり取りが難しければ文章へ切り替える。回答方法を工夫する。応じられない要求にはきちんと断る。
そして、担当者自身も疲弊しない形で継続できる管理体制を作ることが重要です。
入居者様に長く住んでいただければ、退去時の原状回復費や募集費、空室期間も減らすことができます。
当社では、賃貸管理は「空室を埋める仕事」で終わるものではなく、入居していただいた後の状態を維持し、次の空室をできるだけ減らす仕事まで含まれると考えています。
満室になった時こそ、管理会社の仕事が終わったのではありません。
むしろそこから、建物を継続的に観察し、入居者様との関係を維持し、収益を守る管理が始まります。
満室にする力と、満室を維持する力。
その両方がそろって初めて、安定した賃貸経営につながると考えています。